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地域医療構想 病床15万減少へ
―厚労省 「年内に削減医療機関の決定を」―

全国保険医新聞2017年3月25日号より)

 各都道府県が将来必要になる病床数を推計する「地域医療構想」は、2016年度中にすべての都道府県で作成が完了する予定だ。現在のところ、25年に向けて全国の病床数が約1割減少する見通しで、患者の受け皿確保に懸念も出されている。今後、地域医療構想調整会議で具体化に向けた議論が進められる。地域の実情に合わせた医療提供体制を求める取り組みが重要だ。

おおむね政府推計どおりに

提供:共同通信社

 3月末までに策定予定の地域医療構想(案含む)では、2025年に向けて全都道府県の病床が、約15.6万床と1割強減少する見通しとなった(3月9日「共同通信」)。13年の約134万床から25年には約119.8万床となる。41道府県で病床が過剰とされ、削減幅は鹿児島、熊本、宮崎など8県で30%超、19県で20%台となり、削減幅20%以上が全国の半数以上を占めた(図)。
 削減数は、15年6月に政府専門調査会が推計した約15〜20万床削減の下限値に近い結果となった。厚労省は当初、政府調査会推計は参考値にすぎないと述べていたが、実際に策定された全国の地域医療構想は、その削減推計の範囲内におさまる形となった。

一般病床からの10万人は外来で

 構想に沿って病床削減を進めた場合、25年に向けて介護施設や高齢者住宅を含めた在宅医療等で新たに30万人程度の対応が必要と見込まれている。一般病床からの対応が約10万人、療養病床からの対応が約20万人と想定されている。厚労省は、在宅医療の整備量の推計にあたって一般病床からの患者(概ね1日175点未満の患者)は基本的には外来医療で対応し、療養病床からの患者(医療区分1の70%等)は、介護療養病床の新たな転換先とする「介護医療院」等への転換見込量を除いた上で、外来、在宅医療、介護サービスでの対応に按分する考えを示している。
 外来対応の見込み数の根拠に示された「一般病床の退院患者の行先は8割が通院」との厚労省の調査データに対して、医療計画に関する審議会では「外来患者でも家族同伴、ヘルパーが付添う重症患者、在宅医療に近い状態の患者などで区別される」「外来医療後に在宅移行するケースもある」など臨床現場の感覚との乖離や「厚労省の調査は長期入院患者のサンプルが少ない」などデータ精度への疑問が出ている。別途、現在訪問診療を受ける患者の自然増への対応も必要とされる。介護サービスも未整備なまま大幅に病床削減されれば、患者の療養環境はさらに悪化し、診療所にもさらなる負担が強いられる。

構想策定で協会の意見反映も

 構想の策定は16年度中に全都道府県で完了予定で、今後は地域医療構想調整会議(17年度)で内容の具体化が議論される。厚労省は調整会議を概ね3カ月に1回、年4回開催する案を示し、第3回(10〜12月)には、機能ごとに具体的な医療機関名をあげた上で、削減・転換する病床を具体的に決定するよう求めている。国から定期的に都道府県に進捗を確認するとしており、18年度の構想の本格実施前に、病床削減先を決めるよう促す構えだ。
 構想策定に際しては、保険医協会の意見を受けて「信頼に足るデータがあれば推計方法の更新を検討する」「在宅医療が不十分なまま病床削減は先行しない」「県民・関係団体の知見を集約する」など回答・追記した地域もある。
 今後、調整会議での議論を見据えながら、各地域で実情に応じた医療提供体制の確保を求めるさらなる働き掛けが必要だ。

以上