【薬価のからくり】第3回 対照薬・加算に裁量
			        ―類似薬効比較方式―
				    			        (全国保険医新聞2017年4月25日号
より)
				     
				     高すぎる薬価を生み出す仕組みを連載で考える。今回は、類似薬効比較方式T。すでに同じ効果を持つ類似薬がある新薬の薬価を、類似薬をベースに算定する仕組みだ。新薬が類似薬に比べて高い有用性等が認められる場合は、5種類の補正加算が上乗せされる。
				    
				    不透明な算定
				     補正加算の新設は1982年から始まった。当初一律3%の加算率は、製薬業界の要望に沿って徐々に引き上げられてきた。複数の薬効成分を1つに配合しただけの配合剤や、用法用量を変えただけの新薬でも、最低でも類似薬より5%高い薬価が設定される。画期性加算では本体薬価を超える場合もある。
				       例えば、有用性加算では、▽臨床上の有用な新規の作用機序▽類似薬に比べて高い有効性・安全性▽対象疾病等の治療方法の改善―などの程度をポイント化して決定される。しかし、「どれをとっても判定者の主観、裁量に大なり小なり依存せざるを得ない」(醍醐總東大名誉教授)。類似薬の選定についても、臨床試験で比較した薬剤と異なるケースが見られる。
				       現に、元厚労省薬価審査責任者が、比較対照薬の選定、加算の有無や加算率の選定などに関わって、薬価つり上げ交渉戦術について製薬メーカー対象に講演していたこともある。
				       算定案をまとめる薬価算定組織の審議も非公開の上、議事録すら作成されていない。新薬の値づけの透明性・公正性に疑義が抱かれても仕方ない。
			        
				    C型肝炎の薬価差2.6倍に疑問
				     例えば、近年のC型肝炎治療薬の薬価では、ソバルディの1日薬価約6万2,000円(当初)はテラビック(有用性加算T:40%)などに合わせた上で、画期性加算100%が上乗せされた。次いで、ソバルディとダクルインザ(有用性加算T:40%)に合わせた上で、ハーボニーの1日薬価約8万円(当初)が算定されている。
				       加算が重なり、薬価がかさ上げされていった結果、ダクルインザ・スンベプラ併用療法とハーボニーの治療期間当たりの総薬価では265万円弱と673万円弱で2.6倍近い開きが出た。
				       こうした薬価差に対して、「ダクルインザ・スンベプラ、ソバルディ・リバビリン、ハーボニー、ヴィキラックス間の治療成績に大差がない」として、比較する薬の選び方はじめ類似薬効比較方式(T)での算定自体を疑問視する声も見られる(廣田憲威、「C型肝炎治療薬(直接作用型抗ウイルス薬)の費用対効果に関する一考察」、2016年5月)。
			         薬価算定プロセスの情報公開を進め、各種加算の抜本的な再検討が必要である。
				    
				      
				        新薬・薬価算定時の主な補正加算率の推移 | 
			          
				      
				        
				          
				          
				          
				          
				          
				          
				             | 
				            要件 | 
				            2000年度 | 
				            02年度 | 
				            06年度 | 
				            08年度 
				              以降 | 
			               
				          
				            | 画期性加算 | 
				            @〜Bとも 
				              満たす | 
				            40% | 
				            40〜100% | 
				            50〜100% | 
				            70〜120% | 
			               
				          
				            | 有用性加算(T) | 
				            @〜Bのうち 
				              2つを満たす | 
				            10% | 
				            15〜30% | 
				            25〜40% | 
				            35〜60% | 
			               
				          
				            | 有用性加算(U) | 
				            @〜Cのいず 
				              れかを満たす | 
				            3% | 
				            5〜10% | 
				            5〜20% | 
				            5〜 30% | 
			               
				          
				            | 市場性加算(T) | 
				            希少疾病用 | 
				            10% | 
				            10% | 
				            10% | 
				            10〜20% | 
			               
				          
				            | 市場性加算(U) | 
				            市場規模が 
				              小さい | 
				            3% | 
				            3% | 
				            3% | 
				            5% | 
			               
				          
				            | 小児加算 | 
				            用法・用量に 
				              小児用を含む | 
				            ― | 
				            ― | 
				            3〜10% | 
				            5〜20% | 
			               
			              | 
			          
				      
				        ※@有用な新規作用機序、A高い有効性・安全性、B治療方法の改善、C製剤工夫による有用性 
			            ※14年度より先駆導入加算が10%(現・先駆け審査指定制度加算10〜20%)導入されている | 
			          
			        
				    以上