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【生活相談ダイアリー】突然の火災 家も仕事も失って

全国保険医新聞2017年4月25日号より)

 

 政府は患者負担増計画の議論を進めているが、患者・国民の生活はどうなっているのか。生活困難者などを支援するNPO法人ほっとプラスに寄せられた相談事例を紹介し、実態を探る(月1回掲載)。

 

今回は病院からの相談で支援を行ったCさんの事例を紹介する。

 

退院先がない

 Cさんは生まれ育った地元で長年左官業を営み、工業所が併設された自宅で生活していた。
ところが、自宅兼工業所が火災に見舞われ、やけどやけがを負ってしまう。持病の心疾患も抱えており、そのまま入院することとなった。
入院から数カ月、退院できる状態にはなったものの、自宅は火災で全焼してしまったため帰る家がない。火災保険にも入っていなかったようで、保障もない。
そのような状況で病院のソーシャルワーカーから当法人に相談が入った。

 

アパートの保証人いない

 まずは住まい探し。連携している不動産業者に相談し、入居できる物件を一緒に探した。病院にバスで通えて、今までの生活圏から大きく離れない場所にアパートを見つけることができた。初期費用は本人の貯蓄から何とかなったが、最大の壁は保証人探し。独身で親戚とはほぼ疎遠だったため保証人を立てることが困難であった。賃貸保証会社と契約し、私が緊急時の連絡先になることで入居にこぎつけることができた。
 退院にあたり、病院のソーシャルワーカーと話し合い、訪問介護や訪問看護のサービスも利用することとなった。

 

生活保護受けながら高齢者住宅へ

 月2〜3回自宅を訪問し見守りを行っていたが、半年ほどたったある日、緊急入院したという連絡が入った。数カ月の入院生活の後、体調は改善したが、本人としても病院側としても今度の退院後は1人暮らしではなく常時の見守りがある環境での生活がよいということで、退院後に入居できる施設を探すこととなった。その頃には貯蓄もほぼ底をついていたため、生活保護を申請し、生活保護でも入居可能なサービス付き高齢者住宅を見つけることができた。

 

地域生活を支える体制づくりを

 今回のケースは、火災に加え、体調の悪化が重なり貧困状態となり、また住まいの確保も困難となったという事例だ。Cさんだけでなく、退院後の住まいや生活に不安を抱える人は多い。医療機関だけですべての支援をすることは難しいが、医療、福祉、介護等が連携して地域で安心して生活を支えていける体制づくりが必要だ。

(特定非営利活動法人ほっとプラス事務局次長 平田真基)

ほっとプラス 社会福祉士などが生活活困難やホームレス状態にある人々の相談支援活動をするNPO法人。ベストセラーとなった『下流老人』著者の藤田孝典氏が代表理事を務める。

以上