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財政審が建議 社会保障費 徹底抑制を提起
―医療・介護同時改定はマイナス方針―

全国保険医新聞2017年6月5日号より)

 

 財務省の財政制度等審議会は5月25日、「『経済・財政再生計画』の着実な実施に向けた建議」を発表した。安倍政権が6月上旬にも閣議決定する「骨太の方針2017」と合わせて、今後の経済財政政策に反映される見通しで、2018年診療報酬・介護報酬同時改定のマイナス改定や患者負担増の圧力が強まることが想定される。全国保険医団体連合会はこうした動きに対し、新たな患者負担増をやめ、診療報酬本体を10%以上引き上げる取り組みを強める。

 

 財政審の「建議」は「社会保障の効率化・適正化」という名目で、社会保障の徹底的な抑制を提起した。基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化させることの重要性をあらためて強調。そのために歳出削減と消費税率の10%への引き上げを実施するよう求めている。歳出削減では「改革工程表」(2015年12月策定、16年末に改定)の検討項目等を全て実行するよう求めている。社会保障費の自然増を16〜18年度で毎年5000億円に抑えるとした「目安」を達成するだけでなく、さらに伸びを抑制する方針だ。

図 社会保障費自然増の抑制

 社会保障の自然増の抑制額は、13年度から17年度までの累計で1兆4600億円に上る(図)。このほかに自然増に含まれないカット分が約2兆円。総額では5年間で3兆5000億円近い社会保障費が削減されていることになる。
 18年の診療報酬と介護報酬の同時改定については、引き下げの方向を示した。「賃金・物価が下落する中で診療報酬本体は伸び続けている」、「医療費・介護費を支える税や保険料、自己負担といった国民負担が増加している」などとして、「国民負担の抑制といった観点も踏まえ、しっかりと取り組んでいく必要がある」としている。
 しかし、02年から08年にかけての4回にわたる累計8%以上の連続マイナス改定で「地域から医療機関が消える」「お産のできる病院がない」「勤務医の立ち去り症候群」など医療崩壊と呼ばれる事態が進行した。10年、12年の改定で一応の手当てはされたが、安倍政権発足後の14年、16年改定はふたたびマイナス改定。累積では10%超も引き下げられており、医療崩壊は依然として続いている。
 診療報酬は患者・国民の受ける医療の質、量、方法を規定する。診療報酬のきちんとした手当てをすることなく患者・国民の健康は守れない。「建議」は、最善の医療を提供したい医療機関と最善の医療を受けたい患者・国民とを意図的に分断するものだ。


患者負担増、速やかな検討求める

 患者負担増については、▽75歳以上の患者負担を1割から2割に▽かかりつけ医以外を受診した場合の定額負担導入▽薬剤自己負担を引き上げる―など、改革工程表が掲げる項目を、速やかに検討するよう提言している。
 安倍政権は5月26日、「現役並み所得者」の利用料3割負担化などの負担増を盛り込んだ介護保険法等改正案を、自民、公明、日本維新の会などの賛成多数で成立させた。介護利用者・家族からは「現在の2割負担でも限界だ」との声が上がっている。改革工程表のさらなる実行は、介護を利用する高齢者だけでなく、社会保障のあらゆる分野、あらゆる世代に負担を押し付けることになる。

以上