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【政策解説】病床削減へ「急性期指標」
―地域医療構想、厚労省が提案―

全国保険医新聞2017年7月15日号より)

 

 各地で策定された地域医療構想では、概ね病床数を1〜3割削減するとともに、急性期病床の削減や回復期病床への転換を進める方針が示されている。厚労省は、病床削減・転換に向け地域医療構想調整会議で議論が進むよう、急性期病院を選別するツールの一つとして「急性期指標」を提案した。

 

急性期の選別指標

医療機関名 指標合計 主な指標(抜粋)
医療
機器等
手術件数 がん・脳卒
中等の治
療状況
救急医療
の実施等
疾患別リハ
早期リハ
A医大病院 53.4 1.5 4.2 5.0 15.5 4.4
B記念病院 33.5 0.8 1.0 3.0 9.1 5.1
C医療センター 24.9 1.0 0.8 0.8 6.4 3.7
Dリハビリ病院 6.0 0.0 0.0 0.0 0.0 2.7

 厚労省は、第4回地域医療構想ワーキンググループ(5月10日)に、急性期から回復期への機能転換を検討する際に調整会議で活用する情報の一つとして、「急性期医療の度合い」を病院ごとに示す「急性期指標」を提案した。
 「指標」は、病床機能報告制度(2014年度)の各項目から、「主たる診療分野が急性期であるような病院」が満たしそうな項目を抽出・加工し、病床数を考慮し急性期医療の度合いを数値化したもの。病院ごとに66項目別の数値と合算したスコアからなる。全国の急性期病院を相対評価した指数といえる。

 

指標活用は中止を―日医

 第6回WG(6月22日)では、岩手県、佐賀県で構想区域内の「指標」を掲載した調整会議資料が示されている。岩手県ではDPC等の他のデータも併せて「客観的に医療機関の役割を検討するための材料の一つ」と位置付け、「指標への異論や否定的な意見は見られていない」などとして、引き続き活用する構えだ。
 「指標」について、日本医師会は、▽いわゆる急性期病院が満たしそうな項目が恣意的に選ばれている、特に内科系の急性期が適切に評価されていない▽点数化して積み上げた急性期項目を病床数で割るが、分母の病床数に療養病床も含めている▽そのため民間に多い急性期と慢性期などを併せ持つケアミックス病院では実態より低い急性期スコアが出され、あたかも急性期機能が劣っているかのように見える―などの問題点を指摘し、「急性期指標を使わないよう都道府県に通知すべき」と求めている。
 これに対し厚労省は、「指標」については病棟単位にする研究も進めていると述べつつ、「注意事項を踏まえた上で、調整会議などで活用するよう都道府県に求める」とあくまで活用を促す構えだ。

 

指標一人歩き、病院格付の懸念 

 また、日医は、地域医療構想では病棟単位で機能分化を進めるが、急性期指標は病院単位となっており、「病院全体のイメージを左右。いわば情報操作」にもなりかねないと問題視している。全日本病院協会も「実際に数値が入っておりランキングのようになっている」「既に病院ランキングが出ている」などの懸念を示している。
 指標作成を担った提案者も、不確かな内容での報告や誤報告、ケアミックス病院の過小評価など「指標」を見る際の注意を促すとともに、個々の医療の結果(アウトカム)も考慮されておらず、「優れた病院ランキング」として使うことはできないとしている。
 「指標」は都道府県に提供され、既に公開している所もあり、「指標」が一人歩きして、地域医療に混乱がもたらされる事態も否定できない。
 地理的困難、経済的理由や仕事の事情などで必要な受診もできない患者は少なくない。病床削減ではなく、住民の医療保障に向けた対応こそが求められる。

以上