保険料水準の統一 当面は困難
愛知 国保運営協議会で引き上げ懸念の声
西村秀一
愛知県国保運営協議会委員
愛知県社会保障推進協議会副議長
(全国保険医新聞2017年11月5日号より)
2018年度から国保が都道府県単位化され、都道府県と市町村が共同で保険者となる。各地で行われている試算から、来年度からの国保料の引き上げが懸念されている。愛知県の国保運営方針を議論する国保運営協議会の委員を務める西村秀一氏(愛知県社会保障推進協議会副議長)に、運営方針案をめぐる愛知県の特徴と、協議会での議論の内容などを寄稿してもらった。
10月13日、今年度第一回の愛知県国民健康保険運営協議会が開催され、国保の運営方針案素案、事業費納付金の算定などについて協議された。
愛知県の特徴は、第一に市町村ごとの標準的な保険料率の算定については、当分の間、現在の医療費水準を反映する設定を原則とするとしたことである。
医療資源の配置が異なることなどを理由としているが、「当面は保険料水準の統一は困難」とした。各委員から質問はあったが反対の意見はなく、私は「県の考え方に賛成」と発言した。
独自減免等への 一般財源は必要
第二に国保の赤字を穴埋めするための一般会計からの繰り入れ(法定外繰り入れ)について、決算補てん等の目的や翌年度の歳入を充てる繰上充用金については、原則として5年以内としたが、保険料の負担緩和目的など保険者の政策によるものについては、年限を切らなかったことである。
市町村の独自の減免措置などの存続が心配されているが、県と個別に協議するとなっている。被保険者委員からは、「政策によるものへの一般財源の繰り入れは、ぜひ存続を」と強い意見があった。
激変緩和でも5%の引き上げ
今回の運営協議会は、厚労省に提出した第三回試算が出されたが、これによると、都道府県単位化後に市区町村が県に納める納付金の被保険者一人当たりの金額(激変緩和措置後)は、県平均で13万273 円で、2015年度決算の101.13%の伸びとなっている。
激変緩和措置の対応は、15年度比で増加率の上限を医療給付費等の自然増(5.18%)までとし、伸び率の最大133.59%の町を105.18%まで下げ、最小95.09%の市を96.10%に引き上げている。
そのため54市町村のうち35市町村で、5.18%の引き上げとなっているが、これがそのまま保険料にスライドされれば、大幅な引き上げとなる。
公費負担増などさらに支援必要
厚労省は第三回試算を見て、大幅な保険料引き上げを避けるため、保険料の上限の「より引き下げ」を都道府県に要請、そのためには法定外繰入の「維持」をも認めている。私は、そのことを紹介し、仮算定での引き下げを求めた。
政府は国保都道府県単位化にあたって、15年度から1700億円、18年度からこれに加えてさらに1700億円の公費負担を投入する。しかしこれは定額負担であり、医療費増などに対応するものとなっていない。
愛知県議会は、昨年12月に国保都道府県単位化にあたって約束した公費負担の確実な実施とともに、今後の医療費の伸びに耐え得る財政基盤の確立に必要な財源確保を国に要請する意見書を採択、政府に要請している。
私はこれを紹介し、「医療費の適正化を国保だけに求めるのは限度があり、さらに国庫負担率の引き上げが必要」と発言、県の担当者からは同意する答弁があった。
また国保財政赤字の誘因となっている「抗がん剤などの高額な薬価の抜本的な引き下げなども必要」と発言した。
都道府県国民健康保険の発足まであと5カ月。誰もが払える保険料に引き下げ、安心して医療を受けることができる国保を目指して、いま都道府県でも市町村でも、議論を沸騰させるときである。
以上