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余剰金で国保料引き下げを―沖縄 繰り入れやめれば負担増

全国保険医新聞2017年11月25日号より)

 

 

 2018年度からの国保の都道府県単位化による国保料の引き上げが懸念されており、各地で、「払える国保料」を求める取り組みが行われている。沖縄協会会員で沖縄県社会保障協議会会長を務める新垣安男氏に、沖縄県の国保の特徴と、来年度以降の国保料をめぐる議論の状況などを寄稿してもらった。

 

 沖縄県社会保障協議会は国保の都道府県単位化に伴う標準保険料試算の公開を求めてきた。8月30日に県は標準保険料試算を公表。それによれば、一人当たりの保険料は8万2,102円となる。
 一般会計からの繰り入れをやめると41自治体中28の自治体は保険料の引き上げをしなければならず、2015年と比較すると一人当たり5,305円の負担増となる。一般会計からの繰り入れを継続すると、一人当たり2万5,038円の余剰が出るとされる。県は余剰金は国保の赤字解消に回すべきと指導している。県社保協は高すぎる保険料を引き下げる財源にすべきだと要求している。

 

所得200万円以下が8割超

 沖縄県の国保の特徴は、加入者のうち被用者が35.5%と一番多く、次に無職者が34.1%と全体の69.6%を占める点だ。年間所得200万円以下の加入者は、85.9%である(全国では76.9%)。一人当たりの国保料の平均額は全国の9万2000円に比べ沖縄県では6万2,000円と抑えられている。これだけでは国保の支出を賄えないため、一般会計から112億円を繰り入れ、一人当たりの保険料を引き下げているのが現状である。一般財源からの繰り入れ額は保険料の31%に上り、全国と比較すると突出している。

 

大戦の影響で国保財政が赤字

 後期高齢者医療制度の導入に伴い国庫支出が減少する中で、被保険者保険からの支出金が国保財政を支えた側面がある。
 しかし沖縄県の場合は、前期高齢者人口が先の大戦の影響を受け、全国平均の約60%であることで、前期高齢者支援金が他府県に比べ大幅に少ない。そのことが国保財政の赤字化を招いている。県は赤字の解消を言うのであれば、前期高齢者支援金の他都道府県並みの支給を要求すべきである。
 県は24年をめどに「法定外繰り入れ、繰入充用金の解消」し、「統一保険料」を目指している。離島も多く、医療水準の格差が大きい沖縄県で「統一保険料」を目指すとなれば、いずれ保険料引き上げや、差し押さえなどの保険料徴収強化を引き起こしかねない。県民生活への影響は計り知れない。
 県社保協は60年ぶりとなる国保の大改革「国保の県単位化」に当たっては、沖縄県の国保の歴史を踏まえ、主権者である県民の意見を十分に反映させ、日本国憲法25条、国保の精神に基づき、社会保障制度としての国保、住民の権利と命を守る制度とすべく、これからも頑張っていく決意である。

(沖縄県社会保障推進協議会会長 新垣安男)

以上