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【薬価制度改革】高薬価の温存・強化
公正・透明なルール 道のり遠く

全国保険医新聞2017年12月5日号より)

 

 

 厚労省は11月22日、中医協薬価専門部会に、2018年度改定に向けた薬価制度の「抜本改革」案を示した。オプジーボ問題を背景に、高薬価是正に向けて一部改善を図る一方、高薬価構造を温存・強化する仕組みを盛り込む内容だ。公正・透明なルールへ道のりは遠い。

 

米国の参照価格引き下げ外国調整

 英米独仏の価格と著しく乖離しないよう調整する外国平均価格調整では、引き上げ調整をもたらしている米国価格について、企業の希望小売価格から公的医療保険制度(メディケア等)の価格に変える。価格が2割程度低下する見込みだ。
 効能追加等で売上が大幅に増えた場合、新たに年4回の機会で薬価を引き下げる。年間売上350億円超の品目について1回につき最大25%引き下げる。

 

高額値付けの仕組み拡大 原価計算

オプジーボの効能・効果と用法・用量

外国平均
価格調整
米国価格は公的医療保険メディケア・メディケイドに変更
市場拡大
再算定
効能追加等で売上が急増する品目は年4回薬価引き下げ
対象は年販売額350億円超の品目。1回につき最大25%引き下げ
原価計算
方式
価格全体に対して各種補正加算(7種類)を行う
製品総原価の情報開示度合いに応じて補正を加味する程度に差をつける
新薬創出
等加算
革新性・有用性が認められる品目に限定
革新的新薬の創出、ドラッグラグ解消等の実績・取組に応じて、3段階で評価
名称を「革新的新薬創出等促進制度」に変更し、制度化を検討
費用対
効果評価
効果が高い・同等で、費用が削減する”薬は価格引き上げも可
中間年
改定
2年に1度の薬価改定の合間の年にも、全品で薬価調査し改定。21年度より改定実施
改定する品目の具体的範囲は20年中に設定。
※中医協薬価専門部会資料(2017年11月22日)より作成

 経費・利益を積み上げて薬価を算定する原価計算方式について、イノベーション評価で価格補正される範囲が、営業利益から価格全体に拡大される。評価は、画期性加算、有用性加算など7種類を活用する。薬価算定組織(非公開)に対する製品総原価の情報開示の程度に応じて、加算を補正する程度に差をつける。情報開示度が高いとされる場合、仮に画期性加算で100%評価がつくと、価格が倍になる。
 薬価に織り込む研究開発費等について、化学合成品で算定組織への情報開示度が高い場合、算定上限を大幅に引き上げる。営業利益の水準も、他産業と比べ突出して高い指標(上場企業の一部:現在14.7%)を引き続き使用する。
 非公開の算定組織の下、高薬価算定を可能とする仕組みがさらに広げられる。

 

「制度化」検討 新薬創出等加算

 長期にわたり高薬価を維持する新薬創出等加算について、対象品目を値下がり幅の小さいものから、革新性・有用性が認められる医薬品に変える。対象企業についても、画期的新薬の創出、ドラッグラグ解消等の実績や取り組みを評価して、達成度に応じて3段階で評価する。名称を「革新的新薬創出等促進制度」に変更し、試行継続に代えて「制度化」(恒久化)を検討する。対象企業と品目を制限する一方、制度化を図るものだ。
 新薬を開発する企業は、薬価算定時の高い営業利益設定、予算による研究支援、産学間連携、研究開発減税など幾重にも恩恵を受けており、大手製薬では数千億から1兆円の内部留保を持つ所もある。新薬創出等加算そのものが不要である。
 C型肝炎治療薬ソバルディなど13品目を対象に試行導入中の費用対効果評価では、「効果が高い又は同等で、費用が削減する」場合は価格引き上げも認める。

 

薬価財源切り離しも 中間年改定

 現行2年に1度の薬価改定の合間の年にも、全品で薬価調査し、実勢価格の値下がりが大きい品目について薬価を改定する。21年度から実施。調査対象は卸売のみだが、医療機関のシステム改修費等の負担増も危惧される。
 改定する品目の範囲は20年中に設定するが、「国民負担の軽減の観点から、できる限り広くすることが適当」としている。厚労省は、実勢価格の値下がりが平均値を超える品目を対象とする場合、最大2900億円の医療費削減になると試算している。国費ベースでは750億円前後になる。
 技術料改定のない年に実施されるため、薬価改定で生まれた財源が技術料本体への充当から切り離され、医療・社会保障費がカットされていくことが危惧される。

以上