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特許期間の延長など凍結
―TPP11 「大筋合意」―

全国保険医新聞2017年12月15日号より)

 

 

 米国を除くTPP署名11カ国は、11カ国のTPP「包括的及び先進的な環太平洋連携協定」(略称CPTPP)の「大筋合意」を発表した。安倍内閣は、米国抜きでもTPPを発効させることのできる仕組みとして、TPP11の締結交渉を主導してきた。看板をCPTPPに掛け替えても、グローバル大企業本位のTPPと変わらない。

 

 「TPP閣僚声明」は、「署名前に意見の一致に至るべき4つの特定事項が含まれている」ことを認めている。▽マレーシアの国有企業の優遇禁止▽カナダの文化産業の著作物保護の例外扱い要求―など、4項目についてはどう扱うか結論を持ち越したのが実情だ。閣僚声明の英文の直訳のとおり、「中核の要素について合意した」段階であり、「大筋合意」とはとても言えない。

CPTPPの構成

前文  
第1条 TPP協定の組み込み
第2条 特定の規定の適用の停止
(※凍結する20項目のリスト)
第3条 効力発生(※GDP要件を外
し、単純過半数の6カ国の批准
で発効する)
第4条 脱退
第5条 加入
第6条 本協定の見直し
第7条 正文(英、仏、スペイン語)

 CPTPPの構成は、第1条は、TPPの規定をすべてCPTPPに組み込むという取り決めで、本体部分となる。第2条は、TPPの規定のうち、実施を凍結する20項目のリストで、米国がCPTPPに参加した時点で凍結は解除される。各国が米国の強い圧力で譲歩した項目の凍結を求めたが、TPPの水準を維持しようとした日本などが20項目まで絞り込んだ。関税、サービス、投資など市場開放に関する取り決めは、そのまま維持された。

 

批准には国会の承認必要

 国民皆保険制度に関連する凍結項目は、@医薬品承認審査に基づく特許期間延長(特許出願から販売承認までの年数に「不合理な短縮」と見なされる年数があれば、特許期間を延長)、A一般医薬品・生物製剤(バイオ医薬品)データ保護(バイオ新薬の製造データ保護は、「8年に限定することができる」と規定)、B医薬品・医療機器に関する透明性(中医協における新薬の保険適用や薬価算定の審議に対して、申請企業の意見提出や不服申立を保障する)、などである。
 TPPとCPTPPは、形式上は別の協定であり、政府が批准するには、国会での審議・承認が必要である。政府に交渉経緯や合意内容を詳細に公表させて、国会での徹底した審議を通じてCPTPPの本質を明らかにすることが求められる。

 

日米交渉はサイドレターが出発点

 2016年臨時国会のTPP特別委員会で、岸田文雄外務大臣(当時)は、TPP協定が発効しない場合でも、日米間で合意した書簡(サイドレター)については廃止しないと答弁している。
 「医薬品・医療機器に関する透明性」のサイドレターは、「(関連する将来の保健制度を含む)事項について、協議する用意があることを確認する」となっており、国民皆保険制度について協議するという確約をさせられた形だ。
 トランプ大統領は1月、米国研究製薬工業協会らと会談し、「我々は世界的なタダ乗りを止めさせる」と述べ、「他国も医薬品開発で応分の費用を負担すべきとの考えを示した」とロイター通信は報じた。米国が「タダ乗り」批判を盾に、医薬品の価格引き上げの圧力を強めてくる可能性がある。薬価制度をてこにして、国民皆保険制度そのものが脅かされる事態になりかねない。

以上