住民税通知への記載中止
―マイナンバー 保団連、協会の要求を反映―
(全国保険医新聞2018年1月25日号より)
医療機関などの事業所に市町村から郵送される住民税の特別徴収税額決定通知書に従業員のマイナンバー記載をするよう総務省が指示していた問題で、政府・与党は昨年12月14日にまとめた2018年度税制改正大綱で、書面で郵送する場合には当面記載を行わないことを決めた。15日に総務省は自治体に通知した。全国保険医団体連合会は従業員のプライバシー侵害や事業所に重い管理責任が押し付けられる問題などを指摘して記載をやめるよう求めていた。
自治体100以上で漏えい
住民税特別徴収の実務では通知書にマイナンバーを記載する必要はない。
医療機関を含む中小規模の事業所では、マイナンバー法に定められた厳格な管理を行うための設備を整えられない場合が少なくない。通知書が送付されれば、刑事罰を伴う管理責任を一方的に強制される。また、従業員が事業所にマイナンバーを提出するかどうかは任意とされている。提供しない従業員にとっては、自らの意思に反してマイナンバーを通知されることになる。
通知書への記載によって、報道等で明らかとなっているだけでも昨年は100を超える自治体で約600人のマイナンバーが漏えいした。
日弁連らも反対
保団連、保険医協会・医会は、▽従業員の自己情報コントロール権の侵害にあたり憲法違反である▽事業者にマイナンバーの管理責任を一方的に負わせる▽誤記載や誤配達による漏えいの危険性がある―などと指摘。各地で自治体に対する対応の調査や、不記載を求める陳情などに取り組んできた。
日弁連や日本税理士会連合会、中小業者らからも不記載を求める声が上がっていた。
総務省が繰り返し不記載は認められないと指示していたにも関わらず、漏えいリスクへの対処や事業者らの声に押されて昨年5月の送付分では300を超える自治体がマイナンバーを記載しなかった。
完全撤回を求めて運動進める
保団連の住江憲勇会長と太田志朗経営税務部長は昨年12月22日に談話を発表し、「『マイナンバーの記載を行わない』と決定されたことは重要な前進」とした。談話では電子媒体等による提供の場合には記載が継続され、書面による郵送の場合にも不記載は「当面」とされていることを指摘。「通知書へのマイナンバー記載の完全撤回を求め、引き続き運動を進める」と強調した。
制度そのものの危険示す
―保団連ら国会で記者会見―
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記者会見のもよう。発言しているのは住江会長 |
政府が住民税の特別徴収税額決定通知書に従業員のマイナンバーを当面不記載にすることを決めた問題で、保団連は関係団体と共に、1月16日に国会内で集会を開き、記者会見した。
電子媒体が課題
保団連の住江憲勇会長は、「医師・歯科医師は日常的に患者の個人情報を取り扱っており、この問題にも危機感をもって取り組んだ」と話し、「総務省は書面への記載はとりやめたが、『eLTAX』などの電子媒体でのマイナンバー記載は続けるとしている。これをやめさせることが今後の課題だ」と強調した。住江会長はまた、マイナンバーと医療情報の紐付けやマイナンバーカードに保険証機能を持たせるなどマイナンバー制度の強引な普及を図る政府の姿勢を批判した。
マイナンバー違憲訴訟に取り組む弁護士の瀬川宏貴氏は「国は通知書へのマイナンバー記載の必要性を具体的に答えられない。通知書による漏えいの多発はマイナンバー制度そのものの危険性を示している」と強調した。
以上