【2018年の焦点】負担増と9条改憲
(全国保険医新聞2018年1月25日号より)
2018年度は診療報酬改定があり、75歳以上の窓口負担の原則2割化など、患者負担増計画も引き続き議論される。医療を守る世論を待合室から広げる取り組みがますます重要になる。また、安倍首相は年始に、憲法改正に向けた強い意欲を示した。通常国会での9条改憲発議を目指している。しかし医療をはじめとする社会保障の充実と9条改憲は両立できない。
1月27、28日に開催される保団連定期大会の活動方針案では、社会保障と憲法を守る運動を一体で推進することを提起している。
75歳以上「2割」など検討
2月上旬に、2018年診療報酬改定の中医協の答申が出される。昨年末、改定率がマイナス1.19%と決定され、保団連は「医療改善には程遠い改定率」と抗議した。初再診料を大幅に引き上げ、改定率の上乗せを求めるなど、診療報酬を改善する取り組みが重要だ。
患者負担増に関しては、18年度末までに▼75歳以上の窓口負担の原則2割化▼薬剤の自己負担引き上げ▼かかりつけ医普及を理由とした受診時定額負担などが検討される。
18年度は、政府が社会保障費の自然増分を年間5000億円に抑え込む「集中改革期間」の最終年となる。さらに政府は、社会保障費の自然増を抑制する新たな目標を設ける検討に入ったと報道されている(1月15日付「毎日」)。より厳しい目標が設定されれば、さらなる負担増の可能性もある。
医療費抑制と給付削減・負担増を、世論の力で押し返せるかどうかの正念場だ。
無制限の武力行使可能に
安倍首相は1月5日の年頭記者会見で「憲法改正に向けた国民的な議論を一層深めていく」年にしたいと述べた。自民党の二階俊博幹事長もテレビ番組で、改憲案の年内の国会発議を目指す考えを示した。
国民のいのちと暮らし、社会保障の基盤である憲法の「改正」の是非が、今年中に国民的な議論となる。
安倍首相の目指す改憲の目的は、憲法9条に自衛隊の存在を明記し、憲法による制約のない海外派兵、武力行使を可能にすることだ。現在でも、社会保障費の削減の一方で、防衛費が毎年過去最高を更新し続けている。9条に自衛隊が明記されれば、社会保障費の削減がますます進むことが予想される。
共同通信の世論調査によれば、安倍政権下での改憲に反対が54.8%、賛成が33.0%、9条に自衛隊を明記する首相の提案に反対が52.7%、賛成は35.3%となっている。国民の中では、改憲を許さない世論が多数だ。
「働き方改革」通常国会で議論
1月22日に開会する通常国会で大きな争点となるのが、残業時間の上限の法定化などを含む働き方改革関連法案だ。政府案では過労死ラインを超える上限の設定が可能となっている。
医師に対しては5年間規制の対象から外すとされている。しかし、医師の過労死や過労死ラインを超える時間外労働の実態なども次々と明らかになっており、安全・安心の医療を提供するためにも、早急に改善すべきである。
通常国会で議論される18年度予算案では、生活保護基準の見直しで、食費や光熱費などの生活費にあたる生活扶助費の受給額が、最大5%の減額とされている。厚労省の推計では、67%の世帯が減額となった。保護基準の切り下げは、最低賃金など他制度にも波及する可能性がある。
医師の「偏在」是正策について医師法、医療法等の改正法案も提出される。厚労省の検討会のとりまとめでは、医師不足の根本的な改善策はないまま、管理者要件の導入の方向性も示されており、注意が必要だ。
以上