薬価制度改革、販売急増で薬価迅速引き下げ
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薬価制度の抜本改革の概要
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経費・利益を積み上げて算定する原価計算方式において、イノベーション評価で価格が加算される範囲が、価格の構成要素の一部となる営業利益から価格全体に拡大される。加算の種類も画期性や有用性など7種類に増やされる。原材料費や労務費など製品総原価に関する情報開示度に応じて加算率に差が設けられるが、加算により2倍以上の価格引き上げも可能となる。情報開示先も、非公開の薬価算定組織に留まる。
薬価に織り込む研究開発経費等についても、化学合成品で算定組織への情報開示度が高いとされる場合、算定上限値を大幅に引き上げる。一般産業と比べて極めて高い営業利益水準の織り込みも現状のままである。
C型肝炎治療薬ソバルディなど13品目を対象に試行導入中の費用対効果評価では、「効果が増加し又は同等で、費用が削減する」場合は価格引き上げも認める。薬価算定案や評価結果案の策定審議が非公開の下、新薬の値上げを可能とする仕組みが広がる形となる。
長期に渡り高薬価を維持する新薬創出等加算について、保団連は廃止を要求している。今回、対象となる品目を値下がり幅の小さいものから、革新性・有用性が認められる医薬品に変える。対象企業についても、画期的新薬の創出、ドラッグラグ解消等の実績・取り組みを評価して、達成度に応じて3段階で評価する。1060億円(16年度、医療費ベース)におよぶ加算総額が4分の1程度削減されると指摘されている一方、現在の試行実施に代えて、製薬業界が要求してきた「制度化」を認め恒久化する。
現行2年に1度の薬価改定の合間の年にも、卸売を対象に全品で薬価調査し、実勢価格の値下がりが大きい品目を対象に薬価を改定する。21年度から実施する。
毎年の薬価調査により、製薬企業・卸売が、薬価維持のために納入価等を下げ渋る傾向が加速し、かえって薬価が高止まりする事態が懸念される。毎年の社会保障費の自然増分を圧縮する政府方針の下で、薬価改定財源が医療費抑制に充てられる事態も危惧される。
以上