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薬価制度改革、販売急増で薬価迅速引き下げ
高値付けの解消は依然課題

全国保険医新聞2018年1月25日号より)

 

 

 2018年度薬価制度の「抜本改革骨子」が昨年12月20日の中医協で了承された。保団連は16年、英米と比べ極端に高いオプジーボ薬価の調査を発表し薬価引き下げの緊急要請を行ってきた。高薬価是正に向けて機運が高まる中、外国平均価格調整、市場拡大再算定などが改善される。他方、新薬のさらなる値上げの仕組みや高薬価維持の加算も制度化されるなど新たな課題も残った。

 

外国調整、市場拡大で改善

 現在、薬価収載時、英米独仏の価格と著しく乖離しないよう外国平均価格を調整している。引き上げ調整をもたらしてきた米国価格について、参照するリストを企業の希望小売価格から公的医療保険制度(メディケア等)の価格に変えることで、価格が2割程度低下する。世界に先駆けて日本で薬価収載した医薬品(原薬輸入等)について、外国価格が登場した場合も価格調整する。引き下げ調整のみ行う。
 効能追加等で売り上げが大幅に増えた場合、新たに年4回薬価を引き下げる機会をつくる。年間売上350億円超の品目について1回につき最大25%引き下げる。市場拡大で再算定される品目の総売上の4分の3が捕捉できるとして、売上急増に対し迅速・広範に薬価を引き下げる。

 

新薬値上げの仕組み拡大

薬価制度の抜本改革の概要

外国平均
価格調整
米国価格は公的医療保険メディケア・メディケイドに変更
市場拡大
再算定
効能追加等で売り上げが急増する品目は年4回薬価引き下げ
対象は年販売額350億円超。1回につき最大25%引き下げ
原価計算
方式
価格全体に対して加算(7種類)を行う
製品総原価の情報開示度合いに応じて加算に差をつける
新薬創出
等加算
革新性・有用性が認められる品目に限定
革新的新薬の創出、ドラッグラグ解消等の実績・取り組みに応じて、3段階で評価
試行的継続に代えて、制度化(恒久化)する
費用対効
果評価
“効果が高い・同等で、費用が削減する”薬は価格引き上げも可能
中間年
改定
2年に1度の薬価改定の合間の年にも、全品で薬価調査し改定。21年度より実施
改定する品目の具体的範囲は20年中に設定

 経費・利益を積み上げて算定する原価計算方式において、イノベーション評価で価格が加算される範囲が、価格の構成要素の一部となる営業利益から価格全体に拡大される。加算の種類も画期性や有用性など7種類に増やされる。原材料費や労務費など製品総原価に関する情報開示度に応じて加算率に差が設けられるが、加算により2倍以上の価格引き上げも可能となる。情報開示先も、非公開の薬価算定組織に留まる。
 薬価に織り込む研究開発経費等についても、化学合成品で算定組織への情報開示度が高いとされる場合、算定上限値を大幅に引き上げる。一般産業と比べて極めて高い営業利益水準の織り込みも現状のままである。
 C型肝炎治療薬ソバルディなど13品目を対象に試行導入中の費用対効果評価では、「効果が増加し又は同等で、費用が削減する」場合は価格引き上げも認める。薬価算定案や評価結果案の策定審議が非公開の下、新薬の値上げを可能とする仕組みが広がる形となる。

 

高薬価の維持を 「制度化」

 長期に渡り高薬価を維持する新薬創出等加算について、保団連は廃止を要求している。今回、対象となる品目を値下がり幅の小さいものから、革新性・有用性が認められる医薬品に変える。対象企業についても、画期的新薬の創出、ドラッグラグ解消等の実績・取り組みを評価して、達成度に応じて3段階で評価する。1060億円(16年度、医療費ベース)におよぶ加算総額が4分の1程度削減されると指摘されている一方、現在の試行実施に代えて、製薬業界が要求してきた「制度化」を認め恒久化する。

 

毎年改定で高止まり招く

 現行2年に1度の薬価改定の合間の年にも、卸売を対象に全品で薬価調査し、実勢価格の値下がりが大きい品目を対象に薬価を改定する。21年度から実施する。
 毎年の薬価調査により、製薬企業・卸売が、薬価維持のために納入価等を下げ渋る傾向が加速し、かえって薬価が高止まりする事態が懸念される。毎年の社会保障費の自然増分を圧縮する政府方針の下で、薬価改定財源が医療費抑制に充てられる事態も危惧される。

以上