医師数絶対増を―診療報酬の支えも必要
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有識者検討会の「中間的な論点整理」では改革に向けたいくつかの方向性が示された。主な方策として「タスク・シフティング(業務の移管)」が強調されている。看護職員(特定行為研修修了の看護師を含む)、薬剤師へのタスク・シフティングをはじめ、診療看護師(ナース・プラクティショナー)の活用、フィジシャン・アシスタントの導入などを検討する方向だ。
しかし、医師の過重労働をもたらしている根本的な原因に切り込んでいるとはいえない。
医師の過酷な働き方をもたらす背景には、低医療費政策とそれに基づく医師数抑制策がある。医師の働き方改革は、国民・患者が受けられる医療の質を落とさずに、過労死・過労自殺を生むような過酷な勤務環境を改善するものでなければならない。そのためには少なくともOECD平均に遜色のない医師数を確保することが必要だ。また診療報酬を拡充し、医療機関が労基法に基づいた上で、十分な医療を提供するのに必要な医師数を確保できるよう支えることが必要だ(図)。
医師の負担軽減と医療の質・安全の確保のために、現場の実態と要望を踏まえた慎重な検討がされるべきだが、必要医師数の養成・確保という根本に手をつけることなく、医師の負担を安易に他職種に肩代わりさせても問題の解決にはならない。むしろ「安上がりの医療」と結び付けられ、医療費抑制の一手段となりかねない点には注意が必要だ。
「中間的な論点整理」では、「フリーアクセス」が医療現場の業務量増加につながってきたと指摘している。その上で、患者側等も含めた国民的な関わりで改革を進めていく必要があるとしている点も警戒が必要だ。患者が必要なときに必要なサービスが十分に提供されるとともに、医師の長時間労働を是正していくことは、医師の働き方改革の基本視点であるべきだ。患者・国民の医療機関への受診が阻害されてはならない。
以上