法定外繰入の継続が必要
国保の都道府県単位化スタート
(全国保険医新聞2018年4月5日号より)
4月から国民健康保険の財政運営の主体を市町村から都道府県に移す「都道府県単位化」がスタートした。これまでも被保険者の負担能力を超えているとして問題視されてきた国保料の引き上げが懸念される。「払える国保料」の実現に向け、市町村の一般会計からの法定外繰り入れなどの継続を求める取り組みが重要だ。
繰入を反映した 保険料実績と比較
都道府県単位化後も国保の保険料は、引き続き市町村が決定、徴収する。その際に、都道府県が提示する「標準保険料率」を目安とする。
読売新聞は3月19日付1面で、「国保保険料55%が減 都道府県移管国の支援増で」と報じた。都道府県へのアンケート調査の結果、2016年に比べ保険料等が上がる市町村が41%、下がる市町村が55%としている。
しかしこれは、被保険者一人ひとりが実際に支払う保険料の負担額を比較したものではない。比較している保険料は、住民の負担軽減等のために多くの市町村で行われている一般会計からの法定外繰入を行う前のものだ。18年度に法定外繰入が継続されなければ、法定外繰入を反映した実績額よりも、被保険者の保険料負担が重くなる市町村は増える可能性がある。
たとえば加入者一人当たりの保険料平均額の減少率が最大(15.5%)と読売新聞で紹介されている沖縄県は、法定外繰入を加味した16年度の実績保険料より13.6%の増加、金額にして1万604円上がる(図)。
埼玉県社保協の調査では、2月末までに動向が判明した県内20市町村の保険税額は、15市町村が17年より値上げ、4市町村が値下げとなっている(所得100万円、63歳、単身世帯、資産なしの場合)。
低所得者多く 医療の必要性高い
昨年行われた保険料の試算の段階では、引き上げの傾向が明らかになり、厚労省は当初削減を強調していた法定外繰入について、18年度は容認に転じた。払える保険料にするためには、市町村の一般会計からの繰入の継続とともに、都道府県の独自支援も求められる。さらに問題の根本的な解決には、減らされてきた国庫負担の増額が不可欠だ。
国保は、低所得の加入者が多いと同時に医療の必要性が高いという構造的問題を抱えている。保険料は所得の2割を超える自治体もあり、加入者の負担能力を超える場合も少なくないと問題視されてきた。市町村は、6月頃までに実際の保険料額を決定する。地域から「払える保険料」を求める声を上げていくことが重要だ。
以上