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財務省 強引に医療費削減
厚労省、医療界から慎重意見

全国保険医新聞2018年5月5・15日号より)

 

 

 6月策定予定の「骨太方針2018」に向けて議論が開始された。2015年から18年度にかけ政府は医療費を中心に社会保障費を年1300〜1700億円削減してきた。安倍首相が19年度以降の新たな削減数値目標を定める意向を示す中、財務省は、人口減に応じた患者負担引き上げ、都道府県別の診療報酬の活用など、さらに踏み込んだ削減を求めている(表参照)。一方、厚労省、医療界からは反対や慎重な姿勢が示されている。

財務省が示す医療改革メニューの概要

経済性評価、
「小さなリスク」は自己負担
・医薬品等について経済性が悪いものは保険収載しない
・処方(箋)なしでも薬局で買える薬(OTC薬)は、給付を制限
・軽微な受診、かかりつけ医以外の受診は別途、追加の負担
効率的な提供 ・薬価制度の抜本改革。創薬コストの低減など
・急性期病床の更なる要件厳格化など
・診療所・医師、高額医療機器の配置に係る実効的なコントロール
・地域別の診療報酬(例:1点単価や入院基本料等の引下げ)
窓口負担 ・75歳以上の高齢者の窓口負担を1割から2割に引上げ
・一定の預貯金等がある場合、入院時の食事代等は給付しない
・高齢者について、窓口負担割合を判定する収入基準の引下げ
・医療費増に応じた患者負担の自動引き上げ(給付率自動調整)
財務省・財政制度等審議会資料(2018年4月11日、4月25日)より修正作成。

 

地域別診療報酬の特例を活用

 4月11日、25日の財政制度等審議会で財務省は、高齢者医療確保法の都道府県別の診療報酬の特例を活用すべきとして、1点単価の引き下げや病床過剰地域での入院基本料引き下げなどを例示し、活用に向けた枠組み整備を提言した。
 厚労省は、地域での医療費の分析や議論がない中、国から活用例を示すことは適切でないとするとともに、診療報酬の地域格差について「妥当性や実効性を慎重に検討すべき」との意見を紹介し、難色を示している。日医は「医療は社会的共通資本であり、全国一律の単価で提供すべき」と反対し、日歯も「1点10円の制度設計のため、地域ごとの変更は相当慎重な検討が必要」としている。

 

患者負担を自動引き上げ 

 財務省は、医療費の伸び、経済成長や人口の減少ペースに応じて患者負担を自動的に増やす仕組みも提案している。
 厚労省は▽患者の医療・生活実態が考慮されず、患者負担が過大になる▽感染症、新薬等による医療費変動や景気変動に応じ、頻繁に患者負担が変わることは将来不安を招く―などとして慎重な検討が必要としている。高額療養費などに見られる「患者負担を上限付きの定率」とする原則の変更にも関わるため、否定的な姿勢だ。日医も「経済成長できなかった場合、給付率で患者のみに負担を押し付ける提案は、あまりにも無責任」などと指摘している。
 「骨太の方針2018」に向けて、議論の動向が注視される。

以上