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医師偏在是正 審議入り、対策の効果は限定的
―根本には低医療費政策

全国保険医新聞2018年5月5・15日号より)

 

 

 医師偏在の是正に向けた医療法・医師法改定法案の実質審議が4月19日、参院厚労委員会で始まった。

 

 改定法案は「医師少数区域」での一定期間の勤務経験を厚生労働大臣が認定する仕組みを設ける。認定を受けたことを、一定の規模・機能を持つ地域医療支援病院の管理者となるための要件とする。「医師少数区域」や「医師多数区域」は、厚労省が示す「医師偏在指標」に基づき、都道府県が設定する。
 国会審議で厚労省は、「医師偏在指標」について、年齢構成や人口、医療圏をまたいで受診する患者の流出入なども踏まえて作成すると答弁。「法案成立後、速やかに公開の場で議論を始める」方針を示した。
 「医師少数区域」は2次医療圏ごとに設定されるが、医師少数区域ではないとされても2次医療圏内に離島・へき地が含まれる場合がある。厚労省は、基本的には2次医療圏単位で認定するが、きめ細かな地域も医師確保対策の対象にし、認定のための勤務経験に加えると運用の方向性を示した。

 

開業規制には 注意必要

 今回の医療法・医師法改定法案は、▽医師の少ない地域で働く医師を評価すること▽都道府県を中心とした医師確保対策とその実施体制の強化―が柱。しかし、低医療費政策とその下での医師養成数の抑制を前提としたものである限り、偏在対策としての効果は限定的だ。法案審議で低医療費政策や医師の絶対数不足に踏み込んだ議論が求められる。
 今回の法案が盛り込んでいる、医師の少ない地域で働く医師を後押しすること自体は否定されるものではない。キャリア形成の面での不安の解消、ワークライフバランスの実現、経済面での手厚い保障といった施策を充実させる必要がある。しかし、管理者要件が拡大され、中小病院や診療所の開業規制に結びつけば、自由開業制を脅かすことになり、注視が必要だ。

 

病床削減とリンク懸念

 また改正法案では、都道府県が中心となって医師確保対策の充実を図ることが想定されている。都道府県では、地域医療構想に基づく病床削減など医療機能の縮小に向かう動きが懸念されており、病床削減などを理由に本来必要な医師数を抑制することになれば、改定法が想定する都道府県の役割に沿わない結果となり得る。

 

住民の声反映を

 改定法案の枠組みの中で偏在対策をより充実させるには、都道府県の地域医療対策協議会の構成メンバーに住民代表を入れて実態を適切に反映させ、医療アクセスの改善など医師確保対策を十分発揮できるような仕組みとすることが求められる。

以上