必要医師数に関する指摘も
―医師法・医療法改定案が参院で可決―
(全国保険医新聞2018年6月5日号より)
医師偏在の是正に向けた医療法・医師法改定法案が5月18日、参院で可決された。法案は先に参院で審議されたため、衆院に送られた。法案は低医療費政策や医師不足には踏み込んでいないという限界がある。参院での議論では、医師の働き方の改善のために長時間労働をなくした上での必要医師数を出すべきとの発言もされた。
法案では、医師の少ない地域で働く医師を後押しするため、医師少数区域での一定期間の勤務経験を認定・評価し、「一定の病院」の管理者となるための要件とするとしている。現在のところ「一定の病院」は、一定の規模と役割をもつ地域医療支援病院が想定されている。委員会審議では、インセンティブとしての有効性や、勤務経験と病院の管理者としての適格性との関連に疑問の声が出された。この問題では対象病院が今後拡大され、中小病院や診療所の開業規制につながりかねない点も懸念される。
また法案では、厚労省が示す「医師の偏在度合い」の指標を基に都道府県が医師確保計画を立て、実施にあたっては医師会や主要な医療機関が参画する地域医療対策協議会で協議するとしている。指標の設計は法案成立後に議論するとしており、現時点で内容は不透明だ。厚労省の示す指標に、経済的理由による受診抑制・中断を適切に反映させる、協議会の構成メンバーに地域住民代表を入れるなど、必要な医師確保対策を十分に実施できる仕組みにすべきことが必要だ。
偏在の根本には 医師数不足
保団連は医師の偏在の根本には、低医療費政策と医師の絶対数の不足があると指摘してきた。法案はこの点を抜本的に改善するものではなく、このままでは偏在対策は限定的なものにならざるを得ない。
5月15日の参議院厚労委員会では、全国医師ユニオン代表の植山直人氏が参考人として出席した。医療法、医師法改正は医師の働き方改革を推進するような内容であるべきとした上で、日本の医師数はOECDの単純平均と比較して約3割少なく、過労死ラインを超える医師の長時間労働によって地域医療が支えられているのが実態と指摘。医師数を増やさずに働き方改革が進めば当然医療崩壊が起きると述べ、長時間労働をなくした場合の必要医師数を出すべきとした。発言の中では、保団連も協力して実施した「勤務医労働実態調査2017」の結果も紹介された。
以上