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新制度でも高薬価― 「抜本改革」後初の薬価収載

全国保険医新聞2018年6月5日号より)

 

 

 2018年度の薬価制度抜本改革が実施された。各種経費、営業利益等を積み上げて薬価を算定する原価計算方式について、新薬のイノベーションを評価して価格を上乗せする対象範囲が、営業利益部分から価格全体に拡大された。他方、薬価算定の透明性等を徹底するとして、算定組織(非公開)に対する製品総原価(原材料費・労務費等)の情報開示の程度に応じて、加算額が割り引かれる形に変更された。しかし、情報開示度が低い場合でもイノベーション評価の拡大に伴い、従来と同程度の加算額が認められ、薬価が下がらない事態に疑問の声が出ている。

 

情報非開示も薬価下がらず

 改定後初となる薬価収載(4月11日中医協承認、18日収載)では、収載15銘柄のうち、原価計算方式で加算が認められた3銘柄は、情報開示度が最低水準と判断され、加算額は8割減で算定された。他方、健保連は「厚生労働省によると、…開示度が最低水準の場合、最終的な薬価は従来と概ね同じになる」として、今回の抗がん剤リムパーザについては150mg錠で5932.5円だが「旧制度だと5980.4円で、減額効果は1%未満にとどまる」と指摘している(健保ニュース、4月25日付)。
 2回目の収載となる中医協(5月16日)では15銘柄を承認した。前回同様、健保連委員は、原価計算方式で算定された4銘柄のうち、「2018年度前の算定方式に比べて安くなったのは(ファブリー病治療薬の)ガラフォルドカプセルのみ。減額効果も0.5%に止まり、他の品目は割高になっている」と問題視した。
 薬剤管理官が「4、5月は制度実施直後であり、今後(情報)開示度が高まるかを見ていく必要がある」と述べ、「2カ月では判断できない」との認識を示したことに対し、健保連委員は「開示して査定されるよりも、あえて低くして0.2(掛け)で加算する方が良いとの選択を行っている可能性がある」とし、制度の実効性に疑問を呈している。製品総原価の内訳は無条件の形で公表を求めることが必要である。

 

値下がり限定的 新薬創出加算

 特許期間中は当初薬価が概ね維持される新薬創出等加算については、対象品目を値下がり幅の小さいものから「真に革新性・有用性」がある医薬品に変えるとともに、対象企業について、革新的新薬の創出、ドラッグラグ解消の取り組み・実績等の達成度に応じて3段階で評価し、加算にメリハリをつける仕組みとなった。
 見直しにより、対象品目は823から562に3割減り、加算総額は1060億円から810億円に低下したが、2014年度水準(790億円)に戻った形にすぎない。対象企業は 90社から83社へ微減に留まる上、段階評価で最低区分は6社にすぎない。
 当初厚労省が中医協に示した見直し案では、対象品目が5〜6割程度に絞り込まれるとされていたが、製薬業界の圧力に譲歩し、再度修正案が示され今回の改正となった。「何のための抜本改革か」「腰砕けの後退案」など診療・支払側委員の危惧が的中した形である。政府の改革指針に示された「ゼロベースでの抜本的見直し」にも程遠い結果といわざるを得ない。

以上