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受診できない子どもたち ― 「要受診」でも未受診の児童・生徒
眼科 62.9%、耳鼻科 42.8%、内科 51.6%

全国保険医新聞2018年6月15日号より)

 

 

 大阪府保険医協会は、府内の小中高等学校で学校健診を受け、「要受診」となった子どもたちの受診行動を調査した。眼科では6割、耳鼻科で4割、内科で5割の子どもが未受診であることが明らかになった。調査結果は、地元マスコミや地方紙で取り上げられるなど、大きな注目を集めている。(調査は大阪府内の公立・私立の小中高等学校1,802校に調査票を郵送して実施。回答率は15.0%。調査期間は2017年11月1日〜18年1月31日) 。

 

「黒板の文字が見えず立ち歩く」

 眼科では、回答のあった270校(小学校155校、中学校75校、高等学校40校)で眼科健診(視力検査を含む)を受け医療機関への受診が必要と診断された児童・生徒のうち、未受診者の割合は62.9%、2万6,338人だった。小学校では46.7%、中学校は66.0%、高等学校は87.1%だった。
 「視力低下を放置しているため黒板の文字が見えず、授業に集中できなくなり、ノートが取れなかったり、立ち歩くことがある」など、学習に支障の出ている状況が報告された。
 耳鼻科では、耳鼻科健診(聴力検査含む)を受けて医療機関への受診が必要とされた児童・生徒のうち、未受診者の割合は42.8%、4,691人だった。小学校では34.0%、中学校は63.7%、高等学校は70.8%だった。「耳垢栓塞放置のため、水泳指導後に中耳炎になった」という重症化事例の報告もあった。
 内科では、内科健診を受けて医療機関への受診が必要とされた児童・生徒のうち、未受診者の割合は51.6%、1,869人だった。小学校では44.4%、中学校は59.5%、高等学校は65.7%だった。「川崎病の既往歴があり、心臓健診・精密検査が必要な児童がいるが、何度声かけをしてもなかなか受診してくれない。保護者は常に忙しそうにしており、受診するのが困難なようだ」との報告もあった。
 未受診の子どもの家庭環境の特徴は「保護者の子の健康への理解不足」が54.4%で最も高かったものの、「経済的困難」が35.9%、「共働き」が35.6%、「ひとり親家庭」が34.4%と高い割合で続いた。

 

行政は実態把握を

 大阪協会は6月7日、保団連主催のマスコミ懇談会で、「未受診が子どもたちの学習環境や学校生活上の安全に影響を及ぼしている。自治体は必要な施策を講じるためにも実態把握が必要だ」と指摘。
 また、学校医療券の活用・運用改善や子ども医療費助成制度の抜本的な拡充が必要とした。

 

子どもの健康誰が守るのか ― 調査用いて国会で質疑

 「健診でなにかおかしい、ということが分かっているのに、この現状が放置されている」。5月29日に「生活困窮者等の自立を促進するための生活困窮者自立支援法等の 一部を改正する法律案」の審査の中で、薬師寺みちよ参院議員(無所属クラブ)が大阪協会の「学校健診後治療調査」結果を取り上げた。
 医師でもある薬師寺議員は「(今回の法案には)子どもの学習支援事業や大学進学支援の強化があるが、その前に子どもの健康はだれが守るのか」「学校健診の後、どのようになっているか文科省は把握しているか」と質疑。これに対して文科省は「健診実施後の受診状況は把握していない」と回答した。
 これを受けて薬師寺議員は「その実態をお知らせしたい」として、大阪協会の「学校健診後治療調査」結果の資料を配布し、学校現場からの声や未受診の家庭の状況について「調査」結果をもとに紹介。「受診したくても受診できない子どもがいる、このことをしっかりと認識してほしい」と訴え、経済的な理由やひとり親家庭などでなかなか受診ができない状況を国として現状把握すること、文科省と厚労省が連携して対策をたてることを強く求めた。

以上