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視点 論点・2018年診療報酬改定
― 急性期・回復期、療養病床・介護病床、有床診 ―

全国保険医新聞2018年6月25日号より)

 

 

 2018年診療報酬改定をどう見るか。加藤勝信厚労大臣は「2025年に向けた道筋を示す、実質最後の同時改定であり、医療介護制度にとって重要な節目」と位置付けている。地域包括ケアの構築や医療機関の機能分化、連携などが強調されてきた。保団連理事、専門部員が改定の論点を解説する。今回は入院分野を取り上げる。

 

■急性期・回復期病床 ― 病床削減と機能分化を強要

永瀬 勉・理事

 入院医療では、「地域医療構想」における病床機能の分化と削減を診療報酬の面から押し進める改定が実施された。前回の改定では、「重症度、医療・看護必要度」見直し等により、7対1入院基本料を算定する病床は1万7,000床減少したが、今回の改定はそれをさらに推し進めるものである。
 特に、急性期病床の大部分を占める一般病棟入院基本料では、看護職員配置を評価した「基本部分」に、重症度、医療・看護必要度割合を評価した「実績部分」を積み上げる評価体系とされ、10対1看護配置を基本に看護必要度割合や看護配置割合の上乗せによる評価を積み上げた「急性期一般入院料」7区分と、15対1看護配置を基本に、看護配置の上乗せや看護必要度割合の測定を積み上げ評価した「地域一般入院料」3区分が設定された。
 一方、回復期病床の中核となる回復期リハビリ病棟と地域包括ケア病棟については、看護職員配置を評価した基本部分と、「重症者受入率・重症者改善率・実績指数等の割合(アウトカム評価)」による評価体系を積み上げる「回復期リハビリ病棟入院料」と、「訪問診療や訪問看護等の実施状況や看取り指針」などによる評価体系を積み上げる「地域包括ケア病棟入院料」とされた。
 これらの改定によって、一般病棟と回復期リハ病棟、地域包括病棟では、看護配置の確保に加え、入院患者に占める各種要件に該当する割合を常に意識した病棟運営が求められることとなった。これは、病床削減と機能分化を診療報酬の面から病院に強要するだけでなく、重症度、医療・看護必要度を満たす患者割合や、アウトカム評価の強化による患者の選別を病院に強要するものである。
 なお、答申の付帯意見では、「(前略)、入院医療機能のより適切な評価指標や測定方法等、医療機能の分化・強化、連携の推進に資する評価の在り方について引き続き検討すること」とされており、次回以降の改定で実績部分のさらなる見直しが行われる可能性が高い。
 一方、病院では常時2人以上の夜勤体制が必要だが、100床未満の病院で看護職員が夜間救急外来対応のために一時的に2人未満となっても年6日以内に限り、入院基本料を95%減算で算定できる扱いとなった(当日の入院患者数31人以上の場合は看護補助者を含めて2人以上の確保が必要)。これは救急医療を担う病院等の強い要望で導入されたものだが、100床や年6日という切り分けの改善を求める声もある。救急医療と入院医療の両方を確保するためには、夜間の救急外来を担う看護職員が確保できるよう補助金と養成確保を公的責任で実施すべきである。
 また、DPC 病院の要件でもあるデータ提出加算の届出が、10対1看護配置の入院基本料や200床以上の病院の療養病床、回復期リハビリ病棟にも義務づけられたが、診療データ入手とDPC病院拡大の意図が見える。

 

■療養病床、介護病床 ― 患者、家族の生活支える視点を

中島 幸裕・理事

 昨年4月12日に塩崎 恭久厚労大臣(当時)が経済財政諮問会議に提出した「都道府県地域医療構想における2025年の病床必要量」では、急性期病床と慢性期病床が大幅に削減され、約2割の患者を介護施設と在宅医療等で対応する扱いとされている。
 診療報酬改定では、医療療養病床は20対1看護+20対1看護補助以上を基本部分とし、医療区分2・3の割合8割以上の病棟と、5割以上の病棟の2区分とされた。これまで認められていた25対1看護は2年間の経過措置とされて報酬が大幅に引き下げられるとともに、2020年以降の取扱いは未定となっている。
 介護報酬改定では、2018年3月で廃止される予定であった介護療養病床について経過措置が6年間延長されたものの、「喀痰吸引もしくは経管栄養が実施された者」の割合が15%以上か、「著しい精神症状、周辺症状若しくは重篤な身体疾患が見られ専門医療を必要とする認知症高齢者」の割合が20%以上(老人性認知症疾患療養病棟は25%以上)でなければ、基本報酬が5%減額されるとともに、加算の多くと特定診療費が算定できなくなる。
 また、新設された介護医療院は「著しい精神症状、周辺症状若しくは重篤な身体疾患が見られ専門医療を必要とする認知症高齢者」の割合がT型で50%以上、U型で20%以上などの要件を満たす必要があり、これらの基準を満たせない場合は基本報酬が大幅に減額されるとともに、加算の多くと特別診療費が算定できなくなる。
 さらに、従来型老健でも「在宅復帰・在宅療養支援等指標」を満たさない場合は大幅に報酬が減額される。
 これでは、こうした状態に該当しない要介護者の入院・入所は敬遠されかねず、介護病床等への入院・入所が必要であるにもかかわらず、行き場のない要介護者が増える可能性が高い。
 病院に患者選別を強要するような診療報酬や介護報酬の設定ではなく、実施した診療行為や介護の手間が保障できる診療報酬・介護報酬にすべきである。
 また、地域に目を向ければ、一人暮らしや老々介護、認々介護が強いられている家庭も多い。介護療養病床や25対1看護の医療療養病床がなくなっては、そうした患者だけでなく、その家族にも大きな負担となる。
 患者割合による減算をやめて、介護療養病床や25対1看護の医療療養病床の廃止を撤回するとともに、20対1看護の医療療養病床や介護医療院、老人保健施設を含め、報酬を引き上げるべきである。

 

■有床診療所 ― 地域包括ケアへ一定評価

安藤 元博・理事

 2018年4月の診療報酬改定では、有床診を「地域包括ケアモデル」と「専門医療モデル」のカテゴリーに分類し、とりわけ前者への評価が特徴的なものとなった。すなわち地域包括ケアの推進に有床診を活用・重視したい意向の表われであり、一定の評価と考えたい。
 まず有床診入院基本料1〜3の算定要件として従来の条件(地域包括ケア要件)に加えて通所リハ・居宅療養管理指導等の介護事業を手掛けていれば算定できることとした。
 また、中長期入院の対象患者が多いと考えられる一定期間(15日以降30日まで)に65歳以上の患者と特定疾病を有する40歳以上65歳未満の患者に算定する介護連携加算(加算1:192点、加算2:38点)も新設された。
 さらに、在宅復帰機能強化加算においては加算点数の大幅なアップ(5点から20点)と平均在院日数の要件の緩和(60日から90日)や、介護事業を展開している有床診も含めて一部の病院病棟からの転院に際して「在宅復帰扱い」となるなど病院との連携も評価されるようになった。
 介護報酬改定では、短期入所療養介護の食堂設置要件の緩和や、看護小規模多機能型居宅介護においても病床の有効活用につながる等の改定となった。
 ただ、多くは加算の新設や算定要件・施設基準の緩和であり、私たちが一貫して要求している入院基本料本体の引き上げはなく、また、人員基準に係わる加算の引き上げや一般的な入院基本料等加算の有床診における算定要件緩和もない。加えて、急性期医療の負担軽減となるであろう「専門医療モデル」に相当する有床診に関する評価もない等、有床診全体への評価としては決して満足できるものではない。
 今後、有床診入院基本料そのものの引き上げと、国が考えている地域包括ケアの中心的な担い手となるべく有床診の各方面へのさらなる存在価値の周知等が課題となるであろう。

以上