ホームニュースリリース・保団連の活動医療ニュース 目次

 

脱タバコ社会を見据えて@
タバコの歴史 ― 過去・現在・未来

保団連研究部員 橋本 洋一郎氏
全国保険医新聞2018年6月25日号より)

 

 

 禁煙の論点を考える。保団連研究部員の橋本洋一郎氏に寄稿してもらう。(3回連載)

 

橋本洋一郎氏

 タバコ(Nicotiana tabacum)はナス科の植物で、根で合成され葉に移行する2級アミンである「ニコチン」を含む。WHOは「ニコチンはヘロインやコカインと同程度に高い依存性がある」と発表している(2014年)。
 タバコは紀元前から南米のアンデス山脈で栽培されたのが起源で、マヤ文明などで占いや儀式で用いられていた。1492年にコロンブスが新大陸を発見以降、ヨーロッパに伝えられ、日本には16世紀後半に伝わり、17世紀になって栽培が開始された。

 

 1713年に貝原益軒(当時83歳)が書いた養生訓(松田道雄訳、中公文庫1977年)には、「タバコには毒がある。煙をのんで目がまわってたおれることがある。習慣になると大した害はなく、少しは益があるというけれども、損のほうが多い。病気になることもある。また火災の心配がある。習慣になるとくせになって、いくらでもほしくて後になってはやめられない。することが多くなり、家の召使いを骨折らせて、わずらわしい。はじめからのまないのにこしたことはない。貧民は失費が多くなる」と書いている。
 我が国では1900年(明治33年)に世界に先駆けて「未成年者喫煙禁止法」を制定している。なお「未成年者飲酒禁止法」は1922年(大正11年)に制定されている。

 

 私が生まれた2年後の1958年に「今日も元気だ たばこがうまい!」という標語がでた。女性向けには「たばこは 動くアクセサリー」といった標語もあった。外来語tabaco(スペイン語・ポルトガル語)、tobacco(英語)から来ているのに、なぜ「たばこ」と書くのであろうか。皺が増えたり、色黒の顔となって5歳ほど老けて見える喫煙者顔貌≠ニなるので、「タバコは老化促進のサプリメント」、「タバコは美容の大敵」といわれている。
 私の子どもの頃は、お客さんが来たら、まず灰皿を出して一服してもらうのが最初のおもてなしで、その間にお湯を沸かしてお茶を出すのが2番目のおもてなしであった。父親がタバコを吸いながら、タバコは吸い始めるとやめられないから吸わない方がよいと言っていたし、医学生時代からタバコは有害であると考えて、吸わないことにしていた。
 WHOは病気の原因の中でも「予防できる最大で単一の原因」と言っている。また「タバコは非合法薬物の入門薬物」とも言われ、低収入の人のほうが喫煙率が高いようだ。

 

 現在は、確実にタバコは有害であると分かっているのに、なぜタバコ対策が進まないのであろうか。たばこ事業法という法律があり、またJT(日本たばこ産業株式会社)株の約3分の1を財務省が持っているという構造的問題がある。現在、受動喫煙防止法でのせめぎ合いが繰り広げられている。
 保団連も医師会や多くの学会のように、国民の健康増進のために、東京オリンピックを目前に控えたこの時期に「禁煙宣言」を出すべく検討を開始した。

以上