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オンライン医療、要件緩和へ圧力強まる
―スマホで服薬指導も実証へ―

全国保険医新聞2018年7月5日号より)

 

 

 医師がICT機器を使い患者を診療するオンライン診療が4月より保険導入された。条件が厳しいとして、診療手順等を定めた指針や対象疾患などの緩和、さらには薬局でのオンラインによる服薬指導解禁などを求める声が出る中、政府はオンライン医療の規制を緩和し、推進する構えだ。拙速な緩和は問題が多い。

 

規制改革実施計画で方針

 2018年度診療報酬改定でオンライン診療料・同医学管理料が創設された。生活習慣病など8または10種類の医学管理を対象に緊急対応含め1人の医師が対応し、当該医療機関内での実施や指針遵守などが要件だ。
 条件が厳しいなどとして、遠隔診療の関係者からは、「対象疾患の拡大」「緊急時対応は連携医療機関でも可能とすべき」「半年通院できるなら、オンラインを組み入れる必要性は低い」などの声が出され、政府の審議会で要件緩和を求める意見が強く示されてきた。
 6月に閣議決定された規制改革実施計画では、オンライン医療の普及促進として▽指針は年1回以上更新▽オンライン診療の安全性・有効性等に係るデータ収集の推進▽2020年度改定以降における診療報酬上の評価拡充に向けた検討などが記載された。
 オンライン診療料は対象疾患の選定など明確な医学的エビデンスは中医協に示されないまま、見切り発車した形である。要件緩和の議論は拙速といわざるをえない。

 

来年度改正も視野 スマホ等服薬指導

 規制改革実施計画には▽薬剤師による直接対面での実施が義務付けられる服薬指導について一定条件下でのオンラインの実現▽紙媒体を経由する運用となっている電子処方箋の完全な電子化―に向けた検討・措置等も盛り込まれた。
 18年度中に自宅でスマホ等を通じたオンライン服薬指導の実証実験が、兵庫県養父市、愛知県、福岡市の国家戦略特区で実施される。薬局等が少ない過疎地域等で、オンライン診療を受けた患者が対象になる。千葉市は、都市部でも解禁するよう求めている。
 成長戦略である未来投資戦略は、特区の実証等を踏まえつつ、19年度の薬機法改正にオンライン服薬指導を盛り込むことも視野に検討するよう求めている。
 医療用医薬品には重篤な副作用の恐れがあり、適切な服薬方法が伝わらず、健康被害や副作用の見落としにつながりかねない。日本医師会は「医師が行う診療の一環として行う服薬管理、服薬指導と同様に考え、厳しく対応していく」としている。
 生活の利便性向上やITビジネス市場拡大を優先した議論ではなく、患者の命と健康に照らした慎重な検討・対応が求められる。

以上