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中医協、「命の値段」調査見送り ― 医薬品の費用対効果評価

全国保険医新聞2018年7月5日号より)

 

 

 厚労省は6月13日、中医協を開催し、医薬品の費用対効果評価の良し悪しを評価する際の基準値(金額)を割り出す際に活用する「支払い意思額調査」について、当面見送ることを確認した。命や健康に対する金銭的評価を尋ねる調査は人道上問題が多い。調査は完全撤回が必要だ。

 

重篤な人の薬剤費「いくらまで負担すべきか」

 これまで安全性・有効性が確認された医薬品は原則保険収載されてきたが、オプジーボなど高額な薬剤により医療財政が逼迫するなどとして、薬の効果に応じた経済性の良し悪しに従って薬価を上げ下げする費用対効果評価が本格導入される。
 厚労省は、薬価が効果に比べ割高かどうかを判断する際の基準となる金額について、一般市民を対象に行う「支払い意思額調査」を参考に設定するとしてきた。「重篤で余命幾ばくもない人が、その薬を使えば更に1年健康に生きられる場合、公的保険で幾らまで負担すべきか」などと聞くものである。
 「命に値段を付けるもの」などとして調査に反対する日医と、「実施を重ねる中で精緻化を図る」とする保険者の間で議論は平行線を辿ってきた。

 

回答の信頼性疑問  ― 有識者報告

 議論が膠着する中、厚労省は13日、医療経済学等に関する有識者による検討結果について中医協に報告した。検討結果では▽質問方法、提示額など調査方法によって結果が影響を受けやすい▽基準値を設定するための最適な方法が明らかでない▽薬価調整に使う目的を明確にした場合、回答内容に影響が生じうる―などとして、「現時点で調査を実施する必要性は低い」とした。
 日医委員は「検討結果は我々の主張に沿うもの」と調査見送りに賛同した。健保連や協会けんぽなどの委員も調査見送りに同意し、中医協として「現時点で新たな調査はしない」ことが確認された。他方、健保連などの委員は、「調査手法等の研究は進めるべき」と将来的な実施の可能性は残すよう求めており、「議論そのものが時間のロス」などと牽制する日医委員との間で、火種は残された形となっている。
 延命治療や対症療法、治療介入の効果が上がりにくい高齢者などは、治療費用に対して効果は小さくならざるをえない。調査結果の発表で金額が一人歩きし、医療現場に混乱がもたらされかねない。命の選別につながる「支払い意思額調査」は完全撤回が求められる。

以上