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厚労省、地域医療構想で病床削減に向けテコ入れ
行き場のない患者あふれる懸念

全国保険医新聞2018年7月15日号より)

 

 

 地域医療構想では、2025年に向けて病床数を135万床から119万床に減らす。政府は19年3月末までに、個別医療機関毎の削減計画などをまとめるよう求めている。協議が進まない中、厚労省は6月22日、通知を発出するなどして病床削減等に向けてテコ入れを図っている。

 

再編・統合事例を分析・推奨

地域医療構想推進に向けた方策(概要)
公的・公立病院を中心とした再編・統合事例を分析・推奨
都道府県単位の地域医療構想調整会議を設置。都道府県で研修会を開催。
協議の進め方等を助言する地域医療構想アドバイザーを派遣
調整会議で、定量指標を活用し病床を選別する
地域医療介護総合確保基金について、病棟解体撤去・医療機器処分、早期退職職員への退職金割増に充当可能に
知事の権限を強化し、医療計画で認めた基準病床数以下でも、必要病床数を超える場合、病床を指定しないことを可能に(国会審議中)
※厚労省資料より作成

 3月末時点で、病床削減等が決まった医療機関は、全国1万4,000施設のうち117施設で1%に満たない。病床削減等に向けて協議を始めたのは、公立・公的病院が76%に対し、民間病院等は0.4%にすぎない。厚労省は、都道府県に対し、具体的な取りまとめに向けて協議を加速するよう求めている。
 協議を開始していない医療機関について、病床機能報告における2025年などに予定する病床機能を、医療機関の対応方針とみなして、病床削減等を協議する地域医療構想調整会議で共有し協議を開始するよう求めている。
 厚労省によれば、公立・公的病院を中心に24区域で再編統合が進行している。厚労省は、全国の再編統合事例について協議過程・効果を分析し、統合等のメリットや必要性を示すなどして、病床削減を推進する考えだ。医療ニーズがあっても医師の高齢化や医師・看護職員不足で十分に対応できないなど地域の実情も見られる中、医療従事者の確保・増員に向けた対応こそ必要である。

 

指南役を派遣

 調整会議について、構想区域別に加え、都道府県単位で設置する。各構想区域の調整会議における合意状況や再編統合の議論状況について議論する。合わせて、都道府県に調整会議の参加者などを対象に研修会を開催することを求め、厚労省が示す方針の徹底を図る。さらに、厚労省は、構想推進の指南役として「地域医療構想アドバイザー」を養成し、都道府県に派遣し協議を促進する。
協議に際して、定量的指標を設定し、病床機能を選別することを促す構えだ。厚労省検討会では、手術・がん化学療法・がん放射線治療など6項目に関する1病床当たりの算定回数等を指標に、急性期をふりわける埼玉県の事例などが紹介されている。

 

基金使い病床削減加速

 アメとムチも活用して病床削減を促進する。都道府県に配分される「地域医療介護総合確保基金」は、18年度より病棟解体撤去・医療機器処分、早期退職職員の退職金割増などの費用にも充てることを可能とした。病院統合に際して、給与格差の是正にも使えるようにすべきとの声も出ている。
経済財政諮問会議では、民間議員は、病床削減など「構想の進捗」に応じて、基金や保険者努力支援制度(国保補助金)を配分するよう求めている。さらに、病床過剰地域において病床を削減する病院に支援金を交付する“減反政策”まで主張している。
他方、国会審議中の医療法改正案には、医療計画で認めた基準病床数以下でも、構想で定める必要病床数を超える場合、増床を認めないことを可能とする措置を盛り込んだ。
25年に向けて、在宅で70万人の患者増を見込む一方、開業医は高齢化し、在宅医療の継承が危惧されている。介護職員は245万人を必要とする一方、33万人余不足する見通しである。病床削減で地域に行き場のない患者が溢れる事態が懸念される。

以上