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皆保険こわす地域別診療報酬
単価切り下げ他県に波及も

全国保険医新聞2018年7月15日号より)

 

 

 都道府県が独自に診療報酬を定める「地域別診療報酬」が「骨太の方針2018」に検討事項として盛り込まれた。国民皆保険の破壊につながる「地域別診療報酬」の導入は認められない。

 

国保の都道府県化で浮上

 6月策定の「骨太の方針2018」では、「地域独自の診療報酬について、都道府県の判断に資する具体的な活用策の在り方を検討する」と明記された。地域別診療報酬は、高齢者医療確保法に規定された権限で、1点単価切り下げ等が想定されている。都道府県の申請を受け、中医協での検討を経て最終的に厚労大臣が判断する。これまで実施例はない。
 2018年4月から、都道府県が、病床の縮小再編を進める地域医療構想と国保財政運営の双方を担い、医療提供と費用徴収を一体で管理する体制になった。これを契機に、地域別診療報酬を使い、医療費を直接的に抑制・削減しようとする動きが見られる。
 積極的に検討する方針を示している奈良県では、県が定めた医療費抑制目標(23年度)を達成できなかった場合、国保料上昇を抑制するため、1点単価引き下げに係る申し入れを検討するとしている。23年度を待たずに、国に申し入れる構えを示している。

 

医療の質低下のおそれ

 奈良県医師会では5月、地域別診療報酬の導入に反対する決議を採択した。経営困難による「医療従事者の県外流出」、「設備投資ができなくなり、医療の質が低下する恐れ」があるなど懸念を示している。6月の日本医師会代議員会では、横倉義武会長は「地域別診療報酬による医療費抑制は絶対に容認できない」とあらためて強調している。
 財務省がまとめた「建議」では▽診療報酬1点単価の調整▽病床削減が進まない場合の入院基本料単価の引き下げ▽薬局が増えすぎた場合の調剤技術料引き下げなど具体例を示しつつ、具体的なメニュー案の提示や活用に向けた枠組み整備を厚労省に強く求めている。「骨太の方針2018」を受けて、引き続き社保審等で議論が進められそうだ。
 診療報酬引き下げは患者が受ける医療水準を引き下げるとともに、当該地域の医師の技術料を不当に評価するものだ。地域別診療報酬を一つの県で導入すれば他県に波及することが懸念される。高齢化や医療技術の進歩で医療費が増える中、全国で診療報酬引き下げ合戦の様相も呈しかねない。公的保険で受けられるサービス水準に地域間格差を持ち込む地域別診療報酬の検討・導入は認められない。

以上