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脱タバコ社会を見据えてB
禁煙外来を始めてみませんか

保団連研究部員 橋本 洋一郎氏
全国保険医新聞2018年7月15日号より)

 

 

 禁煙の論点を考える。保団連研究部員の橋本洋一郎氏に寄稿してもらう。(3回連載)

 

橋本洋一郎氏

 2011年9月に国連で、NCD(non-communicable disease 非感染性疾患)対策を国際的に推進していくべきとする宣言が採択されています。@タバコの使用A不健康な食事B身体活動不足Cアルコールの有害使用の4つのリスクが、@がんA循環器疾患(脳卒中や心疾患など)B糖尿病C慢性呼吸器疾患(COPDなど)の4つのNCDを引き起こします。タバコの使用は全てのNCDの発症に関与しており、禁煙支援はNCD対策において大変重要となります。
 喫煙によって中脳の腹側被蓋野A10細胞群にあるニコチン性アセチルコリン受容体にニコチンが作用すると、側坐核などの大脳辺縁系のD1受容体にドーパミンが到達して脳内報酬系に作用します。喫煙には「身体的依存(ニコチン依存)」と「心理的依存(習慣)」の2つの依存があります。喫煙者の7割以上は「ニコチン依存症」であり、気合いだけでは喫煙はやめられません。

 

 正しい禁煙方法は、@期日を決めて一気に禁煙を実行(完全禁煙)Aある程度の禁断症状(ニコチン離脱症状)を覚悟するB喫煙しやすい「行動」をやめるC喫煙しやすい「環境」を作らないD喫煙したくなったら「代わりの行動」をとるE自力でできない場合は禁煙補助薬を使用(禁煙外来)する―です。
 禁煙でやってはいけないことは、@軽いタバコに変えるA徐々に減らそうとするB加熱式タバコ・電子タバコに変えるC「1本くらいなら」と甘くみる―です。
 われわれ医師は日常診療の中で、愛情と熱意をもちながら、医学的な知識をもとに毅然とした態度で、禁煙支援の世界標準の「5Aアプローチ」(Ask・Advice・Assess・Assist・Arrange)を用いて禁煙支援を行います。ただし禁煙支援は一律にやってもうまくいきません。行動変容ステージモデルや動機付け面接法を活用します。私は、行動変容ステージモデルを活用してステージ(無関心期、関心期、準備期、実行期、維持期)に応じた禁煙支援を全ての喫煙者に日常診療で行っています。この行動変容ステージモデルは日常診療の多くの場面で活用できます。

 

 喫煙者は国の政策によって依存症になった被害者と考えています。救済策として、一定の条件を満たせば保険による禁煙外来での治療を受けることができます。16年の診療報酬改定から、34歳以下はブリンクマン指数の条件(1日の喫煙本数×喫煙年数=200以上)が撤廃されました。中高生や若年者の禁煙治療が大変行いやすくなりました。
 禁煙外来によって禁煙が達成できると、患者は主治医のおかげと喜んでくれます。成功すれば健康増進になります。目の前の喫煙者を保険医として支援するために、禁煙外来を始めてみませんか。

以上