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保険証の性格変える医療等ID、20年本格運用
セキュリティに懸念

全国保険医新聞2018年9月15日号より)

 

 

厚労省は8月13日、医療情報の共有・収集・連結に際して、個人を識別するのに用いる「医療等ID」について保険証番号を活用する方針を公表した。番号が見える形になることや保険証が本人確認として活用される現状などから、盗み見や不正利用を懸念する声が強く出ている。2020年度の運用開始ありきの制度設計は問題が多い。

 

被保険者番号で代用

 医療データベースの収集・結合や医療情報連携での医療機関間の情報共有に関わって、個人一人一人を識別するために用いる「識別子(ID)」については、機微性の高い医療情報が対象となることや漏洩リスク等を考慮して、▽マイナンバーとは別に医療等分野における番号制度として「医療等ID」を導入する▽地域医療連携や研究など利用目的に応じて異なるIDをつくる▽書面への書き取りや人を介在した漏えいを防止するため「見えない番号」(電磁的な符号)を用いる―などの方向で検討されてきた。
 今回、具体的な「医療等ID」の仕組みについて、厚労省は、新たなID発行・管理に伴う費用やシステム改修費などを避けるためとして、新規にIDは発行せず、保険証に記載された被保険者番号を活用する方針を固めた。これまでの「見えない番号」として「医療等ID」を作る方向から「見える番号」として「被保険者番号」を使う方針に変更された形である。

 

基金等で履歴一元管理

 被保険者番号により個人を識別するため、審査支払機関が、個人の被保険者番号と資格情報について保険者をまたがって一元的に管理する仕組みを構築する。
 現在、健康保険証の被保険者番号は、原則世帯単位となっており、番号や資格管理は保険者ごとに行っている。転職や引越し等で加入する保険が変われば、個人の氏名・性別や負担割合等の資格情報は引き継がれず、継続的な資格管理はされていない。
 被保険者番号について、世帯単位番号に2桁の番号を追加して個人を識別した上で、社会保険診療報酬支払基金・国民健康保険中央会が、個人の被保険者番号と資格情報の履歴について、保険者を横断して一元的に管理する仕組みを構築する。医療機関からの照会に応じて、基金等が対象者の被保険者番号の履歴を提供する仕組みが整備される。

 

盗み見・不正利用など懸念

 被保険者番号は事業所で社員番号として利用されていることや、保険証による本人確認として幅広く用いられている現状がある。被保険者番号によるID代用について「なりすましや盗み見が問題になる」「医療情報の不正利用を防止することを困難にする可能性がある」「(医療情報と見える番号が簡単につながることは)特に医療情報と遺伝情報がつながるときにあってはならない」など懸念が多く示されている。
 厚労省は、被保険者番号を取り扱う者を対象とするガイドライン制定や「被保険者番号の第三者提供は慎重に判断すべき」など周知を行うなどとしているが、セキュリティ対応が抜本的に改善されるものとは言い難い。2020年度の本格運用開始に間に合わせるため、安全性を割り引いて安上がりの形で仕組みを構築するものといわざるをえない。

以上