消費税10%は中止を 地域医療・経済に大打撃
―太田志朗 経営税務部長に聞く―
(全国保険医新聞2018年11月25日号より)
安倍首相は2019年10月からの消費税10%への増税実施を宣言した。しかし、14年4月に消費税8%の実施以降、家計の消費支出が増税前を超えた月はなく、消費は低迷し続けている。臨時国会冒頭に、安倍首相は、消費税増税の景気への影響を最小限に抑えるためとして、軽減税率やポイント還元の実施を表明。駆け込み需要による消費の反動減対策として、特定業界支援に10兆円規模の財政支援を行う姿勢を示すなど増税のためになりふり構わぬ姿勢だ。太田志朗経税部長に消費税増税をどう考えるかを聞いた。
消費低迷に追い打ち
消費税を10%にすることで恒久的に毎年4兆5000億円の増税となります。
2014年4月の消費税8%の実施以降、家計の消費支出は低迷しています。患者・国民の生活困窮に追い打ちとなる19年10月からの消費税10%は論外です。
食料品等に「軽減税率」が導入されますが、税率を8%に据え置く形にすぎません。
消費税は所得が低い人ほど負担が重くなる逆進性があり、所得の高低による税負担の格差はさらに開くことになります。
増税額を上回る景気対策は本末転倒
駆け込み需要による消費の反動減を抑えるとして、「消費税還元セール」を解禁するとしていますが、消費の先食いには何ら変わらず、反動減は避けようがありません。
「値下げ」への国のお墨付きにより、かえって納入価格引き下げの強要などを誘発しかねません。
反動減対策として、10兆円規模とも言われる自動車・住宅への減税や購入支援などは特定業界支援そのものであり、消費税の打撃を大きく受ける低所得者などには何の恩恵もありません。
巨額の内部留保を積み上げるための施策ではなく、内部留保を労働者の賃上げや非正規労働の待遇改善で社会に還元させること、それにより医療社会保障の財源を確保することこそが求められています。
消費税増税による税収増を上回る景気対策まで講じて増税を強行するのは本末転倒です。
インボイスで中小業者廃業
複数税率に伴い、取引毎に税率・税額を記載するインボイス制度が導入され、税務署に登録された課税事業者のみがインボイスの発行を認められます(2023年10月より完全実施)。インボイスがない取引は仕入れ税額の控除が認められず、納税負担が増えるため、免税事業者は取引から事実上排除されることになります。
500万超に及ぶ免税業者は、課税事業者を選択し重い事務負担が課された上で、わずかな売上げから重い納税負担を強いられます。
財務省は、小規模零細事業者から吸い上げた納税額を、「軽減税率」で減少が見込まれる税収減の穴埋めに充てると表明しており言語道断です。
医療機関も課税業者となれば、予防接種や健診などの引受により、同様に事務負担が強いられることも強く懸念されます。
医療機関の消費税負担拡大
医療機関の消費税負担については、引き続き診療報酬で対応する議論が進められています。医療機関の事業特性に応じてよりきめ細かく上乗せするとしていますが、13年以降の診療報酬改定の度、上乗せされた項目は改定され、補填分は曖昧・形骸化せざるをえません。
財務省は、医療保険制度内で対応するよう主張しており、税制による抜本的解消は認めない姿勢を崩していません。
保団連は、消費税増税をストップし、医療へのゼロ税率を適用することが患者国民負担と医療機関の損税を解消する最善の選択と考えます。
以上