ホームニュースリリース・保団連の活動医療ニュース 目次

 

社会保障財源を考える E雇用改善で税収増へ

全国保険医新聞2018年12月5日号より)

 

 

 消費税増税に頼らない保団連の社会保障財源提案を連載で解説する。第6回は、雇用改善により税収と保険料を増やす方法を考える。(随時掲載)

 

 1997年から2015年にかけて、欧米の先進諸国では、リーマンショック直後の09年前後での停滞・低下を除き、賃金上昇に見合う形でGDPが成長している。他方、日本だけが賃金が低下し、GDPも低下・停滞している。経済が成長していない結果、税収・保険料の自然増も見込めない状況にある。
GDPの減少、停滞の理由として、グローバル化による安価な輸入品の増加、IT化による技術・流通革新に伴うコストダウンや消費嗜好の変容と供給のミスマッチなどさまざまに取りざたされる。これらは、欧米にも当てはまるものの、物価が収縮するデフレとはなっていない。日本は、リストラや非正規雇用の拡大などで賃金を下げ続けてきた結果、賃金下落と成長停滞の悪循環に陥っていると見るのが自然といえよう。

 

失われた税収25兆円以上

 日本でも賃上げがされてきた場合を想定してみよう。仮に、日本で、賃金が1997年から2015年までの間に、仏、独、伊の半分程度の水準1.2〜1.25倍(年率で平均1.0〜1.25%)に緩やかに引き上げられ、これらの国々と同様なペースで成長していた場合、GDPは1997年の約534兆円から2015年に約670兆〜716兆円に達する形になる。
1997年に比べ、GDPは136兆〜182兆円増え、租税収入(国・地方)がGDPに占める割合(2015年)が約18.6%であることから、経済成長に伴い得られる税収増は(136兆〜182兆円)×18.6%で約25兆3000億〜33兆9000億円と試算される。消費税収で9%強から12%強に匹敵する金額だ。賃金の抑制で年25兆円以上の税収が失われたことになる。

 

抜本的な賃上げを

 成長率は様々な要素に影響されるため、賃上げに伴うGDP増加額の機械的な試算には注意が必要である。しかし、先進諸国との比較からも、賃金の抑制が日本の経済成長や税収に与えてきた影響は相当に大きいことが示唆される。日本では、消費の6割を家計が占めるため、賃金抑制が及ぼす経済への影響は深刻である。
 大企業(資本金10億円以上)の内部留保は425兆8000億円に達しており(財務省「法人企業統計2017年度」)、賃上げを行うことは十分に可能である。税収・保険料増に向けて、抜本的な賃上げなど雇用改善が求められる。

以上