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歯科技工料問題解決のために@
3人に1人が過労死ライン超 ― 歯科技工士の過酷な実態

全国保険医新聞2019年3月25日号より)

 

 

 日本の歯科技工が危機的な状況にある。低歯科診療報酬の下で十分な歯科技工料を得られないことで歯科技工士の過酷な労働と低収入が常態化しており、その解決は歯科医療の重大な課題となっている。歯科技工料の問題を中心に歯科技工をめぐる問題を紹介し、解決の方向を考える。

 

 歯の咀嚼機能を回復する歯冠修復・欠損補綴は、歯科医療の中心的な分野のひとつだ。歯冠修復にはインレーやクラウン、欠損補綴治療にはブリッジや義歯などの歯科技工物を用いる。歯科技工物は患者の口腔内で失われた機能を代行するいわば人工臓器だ。患者一人ひとりの口腔に合わせて精密に製作され、その製作には高い技術が求められる。
 歯科技工物は歯科医師、もしくは国家資格を有する歯科技工士以外製作することができない。歯科技工士は歯科医院に勤務して院内で技工を行う者と、院外の歯科技工所で歯科医師の委託を受けて技工を行う者がいるが、現在では後者の割合が多くなっている。

 今、歯科技工物の製作現場は非常に厳しい状況にある。保団連は2016年に全国の協会・医会の協力を得て歯科技工所へのアンケートを実施し、2,454件の回答を得た。集計結果では1週間あたりの労働時間が81時間以上と回答した技工士は32.1%で、3人に1人が過労死ラインを超える労働時間となっている。101時間以上という回答も1割を超えている(図)。長時間労働の一方、売上から経費、税金、社会保険料などを差し引いた可処分所得は300万円以下が53.3%と半数以上を占める。

 

歯科技工士がいなくなる

 超長時間労働と低収入が常態化する中、多くの若い歯科技工士が歯科技工業を離れている実態が、厚労省の科学研究で明らかにされている。歯科技工士の志望者も激減しており、1991年には72校あった歯科技工士養成施設は2017年には52校に、同じ期間に入学者数は3,155人から927人へと3分の1以下にまで減少した。
 将来の歯科技工を担う人材育成、技術の継承は危機的な状況にある。歯科医療提供、ひいては患者・国民の口腔の健康確保も危ぶまれる事態であり、歯科技工士の過酷な実態の改善は喫緊の課題だ。

以上