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オンライン資格確認導入
審査支払機関改革へ

全国保険医新聞2019年3月25日号より)

 

医療保険関連法案の徹底審議を

 厚労省は2月15日、健康保険法や社会保険診療報酬支払基金法など16本の改正法案で構成する医療保険制度改革関連法案を国会に提出した。マイナンバーカードによるオンライン資格確認導入、審査支払機関改革など医療機関に大きな影響を及ぼす内容を含んでいる。徹底した審議が必要だ。

医療保険制度改革関連法案の概要について

マイナンバーカードを使ったオンライン資格確認の
導入等
法律公布日から2年以内
オンライン資格確認や電子カルテ等の普及のための
「医療情報化支援基金」の創設
2019年10月1日施行
審査支払機関の機能の強化
・データ分析業務の追加。支部長の権限を本部に集
約、都道府県の審査委員会は本部の下に設置。
・レセプト事務点検を全国10カ所程度に集約、手数
料の階層化。
20年10月1日施行ほか
医療保険等と介護保険のレセプトなどの連結解析等 20年10月1日施行ほか
高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施等 20年4月1日施行
被扶養者等の要件の見直し(国内居住を原則とする)
国保の資格管理の適正化(市町村の調査権限の強化)
20年4月1日施行
法律公布日
国保と健保の間における保険料の二重払い解消 法律公布日
※「医療保険制度の適切かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律案の概要」より修正作成

 

医療費の抑制へ

 法案は、オンライン資格確認の導入、審査支払機関改革、医療と介護データの連結分析、保健事業と介護予防の一体的実施など7項目からなる。厚労省保険局長は、「骨太の方針2018」等に盛り込まれた「給付と負担の見直しの議論に向けて(医療保険)制度の効率化を進める」ことが必要とし、「今回の法改正はその土台作り」との認識を示している。
 審査支払機関改革、医療等ビッグデータの利活用や予防・健康づくり推進などを通じて、医療・介護費用の地域差を低い水準へと地ならしを図る狙いだ。
 しかし、医療費等の地域差は、患者構成、気候・地勢、風土や提供体制・産業構造などをはじめ、多様な要因が複雑に絡み合った結果として存在しており、一概に問題視されるべきものではない。

 

医療現場に番号カード持込

 患者の受診時などに、医療機関が保険証の資格切れの有無をリアルタイムで確認できるオンライン資格確認を導入する(対応するかどうかは医療機関の任意)。審査支払機関(支払基金、国保中央会)が、個々の患者について窓口負担割合や資格取得日等の情報を履歴管理することで可能とする。
 マイナンバーカードは2021年3月頃から、保険証は同年5月頃から、オンライン資格確認を開始する。消費税10%に伴う増収分を使い、「医療情報化支援基金」を創設し、医療機関での導入経費を補助する。
 患者は、マイナンバーカードか保険証のいずれかで受診する形となる。医療機関にマイナンバーカードが持ち込まれれば、院内でカード紛失や番号漏洩などが危惧される。
 保険証でもオンライン資格確認が可能となる以上、マイナンバーカードを使う必要性はない。医療を利用して番号カード普及を図るものであり、番号カードでの資格確認は導入すべきではない。

 

保険者機能を強化 

 審査支払機関の「機能の強化」として、業務・機構再編を行う。
 審査支払機関の業務として、審査・支払に加え、レセプトデータ分析等を追加する。支払基金では、保有するデータについて保険者等の求めに応じて分析・提供(有償も含め)するとしている。
 ICTを活用して業務運営を効率化する。支払基金・国が定めた計画では、9割のレセプトはコンピュータチェックのみで終了させ、審査委員による審査は1%以下に留める方針である。
 機構再編に関わり、支払基金において、都道府県の支部長が担う権限を本部に集約するとともに、都道府県の審査委員会を支部から本部の下に設置し直す(設置場所は47都道府県)。職員がレセプト内容が算定告示・通知等に合致するかどうかを点検する業務について、47都道府県から当面10カ所程度に集約を進める。ICT活用や支部集約化で2割の人員を削減する。
さらに、支払基金の財政基盤である保険者から受け取る審査手数料について、従前のレセプト枚数に加え、審査内容等を勘案した設定とする。厚労省は、査定が多いレセプトの審査手数料を上げる、いわゆる歩合制契約について「(契約されない)担保はない」としている。
 患者の個別性が考慮されない機械的審査の拡大とともに、保険者の意向に応じた査定が強められる事態が危惧される。

 

医療等ビッグデータを民間開放

 国が保有する医療と介護のレセプトを連結した上で、データ提供先として、従来の自治体・研究者に加え、民間事業者の利用を解禁する。引き続き、「公益性」を持つ利用に限定し、申請内容の適否は国の審議会で個別に判断するとしている。
 利用者が少ない介護データの結合に伴う個人の特定化や利用主体の拡大に伴う情報漏洩リスク増大などが懸念される。保健向上・健康増進などを理由に、ヘルスケア産業の育成・強化を図るといったビジネス主導の運用がされないよう注視が必要だ。

 

高齢者の保健と介護予防を一体実施

 高齢者に関して、医療保険(国保・後期高齢者医療制度)で行う生活習慣病対策や健診といった保健事業と、介護保険で行う健康体操などの介護予防事業について、市町村を主体に一体的に実施する運用とする。2020年度以降の本格展開を見込む。具体的には、公民館などで体操等を行う「通いの場」への高齢者の参加を増やしつつ、併せて保健師、管理栄養士や歯科衛生士など医療専門職が、栄養・運動・口腔機能チェックや健康相談等を実施し、早期の受診につなげて医療・介護費用の抑制を図る。通いの場に来ない者などには訪問相談を行う。
 保健事業と介護予防が切れ目なく提供されることは望ましいが、要とされる自治体等での保健師配置は、都道府県で4倍近くの格差が見られ、専門職の確保が懸念されている。財源については、後期高齢者の医療保険料で賄うとしており、10月予定の保険料軽減特例の廃止に続き、さらなる保険料負担増となる。

 

外国居住家族は健康保険適用外

 健康保険(健保組合等)が適用される被扶養者について、日本に住所を持つ者に限定する。例えば、夫が日本に働きに来て、妻や子供が外国にいて病気になった場合に、現地や日本で医療を受けた際に、日本の健康保険が適用されたが、改正後は、海外に住む家族は原則健康保険が使えなくなる。
 日本人と同様に保険料を払うが給付条件に差を設けることに外国人差別との声が出ている。外国に残した家族による日本の健康保険の利用が著しく多い、不正利用が見られるなどのデータを国は示しておらず、客観的データに基づく慎重な議論が求められる。

以上