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歯科技工料問題解決のためにB
「7対3」大臣告示から考える 委託技工取引の実態

全国保険医新聞2019年5月25日号より)

 

 日本の歯科技工が危機的な状況にある。低歯科診療報酬の下で十分な歯科技工料を得られないことで歯科技工士の過酷な労働と低収入が常態化しており、その解決は歯科医療の重大な課題となっている。歯科技工料を中心に歯科技工をめぐる問題を紹介し、解決の方向を考える。

 

 歯科技工物の保険点数は、歯科技工士の技術料(製作技術料)が7割、歯科医師の管理料(製作管理料)が3割とされている。これは1988年5月30日付で厚生省告示第165号(いわゆる「7対3」大臣告示)で示された割合であり、歯科点数表でも「歯管修復及び欠損補綴」の通則に示されている。
 委託技工取引に対する施策は1970年代から歯科技工士が求めてきた歴史的な宿願だ。詳しい経緯は第4回で触れるが、歯科技工士の強い声を受けて、様々な議論と当時の厚生省による取引価格などの調査を受けて示されたのがこの「7対3」大臣告示だ。

 

7割に届かない

保険点数の按分割合が示されているにもかかわらず、実際の委託技工取引は多くが「7対3」とはなっていない。日本歯科技工士会の「2018歯科技工士実態調査報告書」によると、「歯科技工所の料金は、おおむね大臣告示料金ですか」という設問に対して、74.2%が「『大臣告示』料金ではない」と回答している。

 「7対3」大臣告示は、発出直後の1988年6月の疑義解釈で「個々の当事者を拘束するものでない」とされた。「7対3」大臣告示による委託技工取引の改善への期待もあった。しかし、実効性が担保されなかったことにより、低歯科技工料の解決にはならず、今日の歯科技工問題の深刻化に至っている。
具体的に見ると、「全部金属冠(大臼歯・金パラ)」の保険点数は454点(材料料を除く)であり、その7割の318点が歯科技工士の「製作技術料」となる(図)。前出の「2018歯科技工士実態調査報告書」では、実際の委託技工料金は「2,400円以上2,800円未満」よりも低い価格が大部分であり、3,180円を下回る取引が一般的であることがわかる。
保団連の「歯科技工所アンケート」でも「7対3」遵守を求める歯科技工士の声は強い。しかし、現在の低すぎる歯科診療報酬では歯科医院の経営上「7対3」では委託技工料を支払えないのも多くの歯科医院の実態だ。
厚労省は「7対3」大臣告示を示しながらも、それを実現するための歯科医師の技術料の適正な評価や取引ルールの整備を怠ってきた。行政として歯科医療改善と歯科技工問題解決のための実効的な対策をただちにとることが求められる。

以上