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過労死生む医師不足にメス―医師の働き方改革

全国保険医新聞2019年9月5日号より)

 

保団連の提案

■医師抜本増へ転換
■勤務の負担軽減策
■診療報酬引き上げ

 厚労省の検討会が今年3月28日に取りまとめた医師の働き方改革に関する報告書では、2035年度までは過労死ラインを超える時間外労働を容認するものとなっている。勤務医の異常な長時間労働は1980年代以降に政府が進めた医師数抑制策の結果生じた医師不足によるものだ。医師の働き方改革のためには、医師養成数の抜本増への転換、当面の課題としての勤務医業務の移管や共同化が必要だ。またそのために診療報酬引き上げなどの財政保障も求められる。

 

過労死ライン容認の異常

 同報告書では、勤務医に適用される時間外労働の水準について、一般の勤務医は過労死ラインとなる年960時間までの延長が可能とされた。さらに、救急や周産期など「地域医療の確保に必要」な特定医療機関に勤務する勤務医や研修医らは、過労死ラインの2倍近い年1,860時間までの時間外労働を2035年度まで可能とされた。研修医については特例の終了年限すら設けられていない。
 命と健康が維持できない長時間労働を容認した報告書は異常というほかない。

 

OECDと比較して医師10万人不足

 過労死ラインを超えた勤務医の異常な長時間労働を招いた原因は、絶対的な医師不足にある。
 日本の医師数は主要先進国などで構成されるOECDと比べ、単純平均で10万人少ない。医療費抑制の手段として80年代から進められてきた医師養成数の削減の結果だ。1984年に8,280人だった医学部定員は2003年には7,625人に絞り込まれた。
 医師の労働組合である全国医師ユニオンによる勤務医対象の調査では、労働条件の改善に有効な方法について、「医師の増員」が63.7%とトップを占めた(複数回答)。
 政府は勤務医の長時間労働是正のために、医師養成数抜本増に政策転換すべきだ。

 

財政保障は不可決

 医師の養成には10年以上かかり、すぐに医師を増やすことはできない。当面の対策として、地域への定着率が高い医学部地域枠の拡充、医師の業務移管や共同化(タスクシフト・タスクシェア)、患者教育、ICTの活用などを通じて勤務医の負担軽減を進める必要がある。
 重要なのは、そのためには財政的保障が不可欠だということだ。「医療経済実態調査」(2017年)を見ても、1施設あたりの赤字幅は民間病院で3.7%から4.2%に悪化し、過去3番目に悪い数値だ。医療機関の自力には限界がある。医療機関経営の原資である診療報酬の引き上げが不可欠だ。タスクシフトに際しては、医療の質・量を確保しつつ、業務移管される側の負担増への配慮・手当も必要である。

以上