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横浜市がカジノ誘致を表明―依存症増加の危険

全国保険医新聞2019年9月15日号より)

 

 政府はカジノを含む統合型リゾート(IR)の開業に向けた準備を加速させている。参院選への影響を避けるために先送りしていた基本方針案を9月4日に公表。8月22日には横浜市が誘致に名乗りを上げた。しかし神奈川協会や、県内の精神神経科診療所で構成される神奈川県精神神経科診療所協会は、ギャンブル依存症多発を懸念して誘致に反対している。神奈川協会評議員で精神科医の長谷川洋氏は、ギャンブル依存症患者の治療に困難を感じており、カジノ施設建設で新たな患者が増えることに強い懸念を示している。

 

治療は困難の連続

神奈川県精神神経科診療所協会副会長神奈川協会評議員 長谷川 洋

 私は開業して13年になる精神科の医者です。様々な患者さんを日々みておりますが、一番難しく感じるのは、ギャンブル依存症の方の治療です。
 患者さんは、診察室では穏やかで反省も口にされます。併存障害がない方ですと診察はすぐに終わってしまいます。そもそも診察に来てくださる方は少なく、そのご家族が悩み負担がかかります。ギャンブル依存症のご主人が多額の借金をかかえ、夫婦関係が悪化し奥様が不眠、うつ状態となり家事全般、育児が困難となり、お子さんへのケアが行き届かず不登校、昼夜逆転となってしまう…。このような負の連鎖が生活基盤となってしまっている方の治療は困難の連続です。

 

「経済効果」は人の不幸と引き換え

 現在、全国で統合型リゾート誘致の動きがみられます。統合型リゾートには大型のカジノ施設がつくられます。カジノ施設は入場料を支払ってギャンブルを行う場所です。ギャンブル依存の方の心理として、入場料で投じた額を取り返そうとギャンブルにのめり込むという状況になるのは明らかです。統合型リゾート施設がもたらす経済効果があったとしてもそれがギャンブル依存の本人、お子さんを含めた家族、知人、多くの方の不幸、苦悩とひきかえではその経済効果はいらないと思います。
 横浜市はこれまで誘致について白紙≠ニしていましたが、一転して誘致の方針を固めたとの報道がなされました。川崎市や相模原市といった地域からも多くの人がアクセスしやすい横浜にカジノ施設ができた場合は、多くの方々が新たにギャンブル依存になってしまうかもしれません。ギャンブル依存は、ギャンブルさえしなければ何も問題のない方々がそこから抜け出せず、その方をとりまく方々を不幸にしてしまう難しい病気です。
 県内の精神神経科診療所で構成される神奈川県精神神経科診療所協会では、横浜市のカジノ誘致反対の声明を出しております。
 ギャンブル依存は、誰もが陥る可能性のある病気です。その落とし穴になるカジノ施設建設に反対したいと思います。(神奈川県保険医新聞8月25日号より)

 

 

生活破壊して財源確保 神奈川協会が反対声明

 神奈川協会は8月22日、横浜市のIR誘致への反対声明を発表し、地元選出国会議員、横浜市各会派に送付した。また、協会横浜支部として市長陳情を行うなど、取り組みを強めている。
 声明では、地元にカジノができれば地域にギャンブル依存症患者が増加し、さらにギャンブル依存症患者は経済的破綻をきたしやすいと指摘。IRがカジノを財源にして運営され、横浜市の財源になるとし、市民生活を破壊することで財源を確保することはあってはならないと厳しく批判した。
 その上で、市民の健康をカジノで損なわせてはならず、横浜の文化・歴史をカジノで汚してはならないとして、IR誘致に強く反対している。
 横浜市が昨年とりまとめた行政計画のパブリックコメントに寄せられたIRに関する意見は、9割以上が誘致に反対していた。県内では、精神神経科診療所協会のほか、港湾運送事業者らでつくる横浜港運協会会長の藤木幸夫氏も誘致反対を表明。市民団体による企画や宣伝も行われている。

以上