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再編・統合病院名公表、相次ぐ批判
不安・混乱、人材確保に足かせ

全国保険医新聞2019年11月5日号より)

 

医療充実に向けた議論こそ

 再編・統合の検討を促す全国424の公立・公的病院等の公表に対し、「病床削減ありき」「地域の実状を無視したもの」など異論・批判が相次ぐ。厚労省は、各地で説明会を行い釈明する一方、民間病院のデータ提供なども行う姿勢を示す。地域医療にさらなる混乱を招くデータ提供は中止するとともに、医療費抑制策を改め、地域医療の充実に向けた議論が求められる。

 

釈明に追われる厚労省

 病院名公表を受けて急設された国と知事会・市長会・町村会との協議の場で、厚労省は、全国各地に出向いて病院名公表の趣旨の説明会を開催する方針を示した。10月に、全国7ブロックの自治体関係者らを対象に開催した。11月以降、都道府県単位での実施も予定する。
 初日の10月17日の九州会場では、橋本岳厚労副大臣が赴き、「公表が唐突だった」「地域の事情を十分に織り込んだデータではない」「何かを強制する趣旨ではない」として、住民に不安を招いたとして釈明した。
 今回の病院の分析・公表を議論した厚労省の地域医療構想に関するワーキンググループに市町村の代表は入っておらず、親会議の「医療計画の見直し等に関する検討会」にも10月中旬に事後報告など、公表の仕方をはじめ説明不足は明らかである。

 

地方の中小病院を狙い撃ち

 地域医療構想ワーキンググループは急性期病床を有する公立病院等を対象に、がん・心臓・脳疾患領域など急性期の診療実績が特に少ない、又は自動車で20分以内に似た実績の病院がある場合、病院の再編・統合を検討するよう求めた。
 再編・統合を伴う場合は、20年9月末までには結論を得るよう求めている。
 しかし、診療実績は急性期医療の一部に限定された上、1カ月分(2017年6月分)で判断されるなど信頼性を欠くとの指摘が多い。
 特に、各症例の絶対数に基づくことから、事実上、地方の中小病院を狙い撃ちしたものとなっている。
実績が少ないとされた病院は、200床以下で7割強を占める。へき地・島しょ部の病院、福島の震災被害者を支援してきた病院や豪雨災害などで医療拠点として最前線に立った病院なども含まれ、個々の病院が現地で果してきた役割など地域の実情も考慮されていない。

 

「就職再考する看護師も」

 厚労省は、再編・統合は病床の削減・機能転換なども広く含むものと説明しているが、廃止・統合という選択肢そのものは除外していない。病院再編・統合を求めるなどの報道を受けて、「地域の病院がなくなるのか」と医療現場や地域住民が大きな不安を抱いたことは当然である。
 再編・統合の例として示されている夜間救急や分娩取扱いなどの中止にしても、その地域で受けられてきた医療が受けられなくなる事態に変わりはない。
 病院名公表以降、自治体、医療現場からは、「公表された病院への就職を再考する看護師まで現れている」(知事会代表)、「副院長が辞表を出して大変だった」(日赤病院)、「内定していた技術部門の職員が辞退した」(済生会病院)など怒りの声があがる。
 各地の説明会でも、「ブラックリストだ」「公表データを撤回すべき」など厳しい指摘が相次ぎ、「外来患者から、『この病院はなくなるのか』と聞かれた。風評被害を払拭するメッセージを出してほしい」、「離島の医師確保に苦戦する中で病院名公表は足かせになった」「既に看護師の引き抜きが起きている」など、職員・患者の間での不安・混乱の広がりとともに、地域の医師・看護師不足に拍車をかけるとの声が噴出している。

 

民間病院分析データの提供も

 厚労省は、説明会で陳謝に努める一方、今後、地域での再編・統合に向けた具体的な検討の進め方を示すとともに、公表された病院のある区域のうち「国が重点的に支援する区域」を定めるとしている。
また、急性期病床を持ち分析対象とされる3094の民間病院の分析データについても都道府県に提供する構えである。
 重点支援区域の指定、民間病院の分析データの提供・公表ともなれば、各地でさらなる混乱を招く事態が強く危惧される。
 病院の縮小・廃止は、地域の存廃にも関わる。民間病院名の公表などは中止するとともに、医療費抑制策を改め、医師はじめ医療従事者を増やしつつ、安全・安心の地域医療の充実に向けた議論が求められる。

以上