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国推計より医師大幅減
―高橋泰国際医福大院教授が講演―

全国保険医新聞2019年11月15日号より)

 

 国際医療福祉大学大学院の高橋泰教授は9月14日の保団連病院・有床診セミナーで記念講演し、「今後医師の実増数は厚労省の見込みより大幅に減少し、地域差は悪化して必要な手術も受けられなくなる」として、医師の増員を進めるべきと警鐘を鳴らした。

 

医学部増設も検討に値する

 厚労省は2033年以降に医師が余るとして、22年以降は医学部定員数を減らす方向で議論を進めているが、高橋氏は「医師が余ることにはならないのではないか」と指摘した。現状では毎年9,000人増え、4,000人の医師が減ると見られている。
しかし、高度成長期の「1県1医大構想」により32の医学部が新設され、医師数が5,000人増えた。今後この医師らがリタイアすることで実増数は厚労省の見込みより大幅に減少する(図)。
高橋氏は「厚労省は高度成長期の医学部新設による影響を加味した推移を見ていない」と指摘し、医学部の増設も検討に値すると述べた。

 

地域の勤務環境の改善必要

 高橋氏は、医師不足に加え地域偏在や診療科偏在が悪化し、医療過疎地の深刻化や手術などの医療提供サービスの低下が危惧されると指摘した。
高橋氏による地域における医師の年代別分布の分析によれば、地方で働く医師らは50〜60歳代以上が多く、これまでは地方の診療所を中心に地域医療を守ってきた。しかし、若手医師、女性医師は大都市での勤務が多く、地方では継承問題が深刻化するだろうと見ている。
また、若手医師を男女比でみると、女性医師が倍増している。診療科別分布では外科総数が減少傾向にある。次を担うと期待されている若手医師、女性医師のためにも、あらゆる地域での勤務環境の改善が必要だ。
高橋氏は、これまで以上に医師を増やすとともに、地域差や診療科格差のない勤労環境の充実を行わなければ医療過疎はさらに深刻化すると訴え、▽診療科偏在の議論する場を設定▽若い医師の動向変化の資料作成と議論▽過疎地や外科医の将来予測と議論▽緊急時の過疎地の医師派遣の仕組み▽外科医増加のための対策▽医師偏在指標では困難地域の選定を優先にする―など6点を提言を示した。

 

診療報酬引き上げが不可欠

 医師不足と地域医療の充実をセットで解決するためには、医師増員と勤労環境の改善が必要であり、医療機関としては経営の原資である診療報酬の大幅な引き上げが不可欠である。保団連は今後も運動を強めていく。

以上