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新薬の高薬価是正が焦点
 透明性の確保徹底を

全国保険医新聞2019年11月15日号より)

 

 2020年度薬価制度改革に向けて、中医協で年末の取りまとめに向けて審議が進む。新薬の薬価評価をめぐる焦点を中心に触れる。

 

新薬で薬剤費の6割占める

 2018年度の薬価制度「抜本改革」を経ても、医療費に占める薬剤費の割合は若干の低下に留まり概ね横ばいで推移している。薬剤費は医療費の22%以上を占めると推測され、英独仏などの約15〜19%と比べても高い。2割の数量に満たない新薬が薬剤費の6割近くを占め、医療費の高騰をもたらしている。膨張する薬剤費の抑制に向けて、新薬の薬価を決める原価計算方式や新薬創出加算の是正が焦点となる。

 

原価計算方式は無条件に情報開示を 

 抜本改革では、原材料や研究開発などの経費や利益を積上げて薬価を算定する原価計算方式について、薬価算定組織(非公開)に対する製品総原価(原材料・労務・製造、研究開発等の費用)の内訳の開示度に応じて、補正加算が割り引かれる形に変更された。ただし、開示度50%未満の最低評価が、これまで16品目中10品目と多くを占める。
 「(輸入や委託などで)原価の情報開示は困難」との製薬業界の主張に対し、日医は「(開示が)難しいからといって、(透明性の確保という)本来の趣旨を変更するのは適当ではない」と加算割引の要件緩和を牽制している。しかし、最低評価が多い背景には、最低評価でも事実上、18年度以前と同水準の高薬価が保証されていることが大きい。健保連は、「情報開示に応じた補正加算評価の手法を見直すべき」と主張する。
 製品総原価の情報を半分以上開示すれば、以前よりも大幅に高い薬価が期待できるにもかかわらず、最定水準の開示に留まるということは、算定されている製品総原価も適正ではなく、実際よりも高い価格が付けられているものと推測せざるを得ない。税・保険料、患者負担で成り立つ公的医療保険財政の下、薬価を決める以上、原価情報は無条件で開示し、公正透明な薬価算定が担保されることが求められる。

 

企業条件の可否 新薬創出加算

 抜本改革では、後発品が出るまでの間、新薬の薬価を維持する新薬創出加算について、対象となる企業に、治験・新薬収載・開発着手など新薬開発の取組・実績に応じて加算に差をつける形にした。企業条件について、製薬業界は「相対評価より予見性に乏しい」「ベンチャーなど小規模企業には不利」として撤廃などを求めている。
 日医は、「インセンティブの評価として、(試験・収載など)数による評価は自然。製薬業界より、具体的な見直し案が示されない限り、現行条件は維持すべき」との構えを示す。
 健保連は、18年度改定で新薬創出加算を受けた企業には、その後新薬開発ゼロの企業もあるとして、「絶対評価も検討の余地がある」と制度設計自体の変更を求めている。
 高薬価の継続は患者アクセスを阻害する。新薬創出加算は廃止すべきである。

 

類似新薬は新薬創出加算分の除外を

 新薬について、類似薬がある場合、類似薬の価格水準に合わせて算定される。この場合、新規性があるとされる新薬については、新薬創出加算が適用されないものでも、類似薬に新薬創出加算が適用されていた場合、その類似薬の薬価に合わせて算定される。
 「加算相当分の累積が薬剤費を膨張させている」「不合理ではないか」などの声もあり、当初の抜本改革案では、新薬について新規性の有無に関わらず、類似薬に含まれる新薬創出加算分は差し引いて薬価算定するよう求めていたが、製薬業界の反発を受けて、新規性に乏しい新薬のみ差し引く形に後退した。
 日医は「収載されてから一定の間に有用性などが示されない場合、しかるべき時機に(類似薬の)新薬創出加算分を(新薬薬価より)引き下げるべき」、健保連は「収載時点で新薬創出加算分は引き下げるべき」と求めている。新薬創出加算の対象外となる新薬の薬価算定に際して類似薬の当該加算分は除外すべきである。

 

当面現行方式 再生医療製品

 3349万円の薬価がついたキムリアなど再生医療等製品については、目下、個々の製品の特性に応じて医薬品、医療材料のいずれで算定するかを決めている。
 中医協では、独自の算定方式が必要とする一方、保険収載は4製品に留まるため、引き続き知見の集積に向けて個別検討を続ける見通しである。
 キムリアをめぐっては、情報開示は最低評価である上、同様なCAR-T療法が200万円程度で提供可能との研究者の指摘もある。独自の算定方式の有無に係らず、情報開示に基づく原価の精査が重要である。

以上