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かかりつけ拡充、急性期削減が焦点
重複投薬解消、認知症入院患者…20年改定の議論佳境

全国保険医新聞2019年12月15日号より)

 

 中医協では2020年度診療報酬改定に向けて議論は佳境に入った。18年度改定に続き、急性期病床の削減とともに、かかりつけ医や在宅医療の拡充が焦点となっている。地域医療の充実に向けて、かかりつけ機能への十分な報酬評価とともに、初診・再診料や入院基本料を引上げ、医療機関全体を底上げすることが必要である。

 

 かかりつけ機能を持つ医療機関を評価する形で、18年度改定では機能化加算が創設された。診療所の1割強が届け出ている。全ての初診で算定できるが、健保連は「生活習慣病など慢性疾患患者に限定すべき」と求めている。日医は「かかりつけ医機能を強化した医療機関の体制を評価した加算」として算定患者の制限に強く反対している。
加算算定に当たり、健康相談や夜間・休日対応の実施に関する院内掲示が求められているが、加えて診察前に患者に加算意義を文書で説明するよう健保連は求めている。日医は、個々の患者への説明は負担が大きいとして、院内掲示での説明に留めるべきとする。
機能強化加算は、後発品の使用率を評価した加算(先発品のみ使用の患者も負担)などと同様に、医療機関の体制を評価したものであり、個々の患者への点数趣旨の説明は却って混乱を招きかねない。

 

重複投薬解消の取り組み評価

 かかりつけ機能の評価をめぐっては、患者の受診先や全ての処方薬の把握・管理が困難との声が多い。重複投薬の解消はじめ処方薬の把握・管理について、医療機関と患者が日常利用する薬局が連携して担う形が検討されている。
 患者のかかりつけ医から依頼を受けた薬局が、対象患者の処方薬・服用期間や処方背景、処方医療機関などを把握し一覧表を作成し、かかりつけ医に戻す。かかりつけ医は、患者に重複投与の有無など説明、他の処方医との処方内容の調整を図る。これまでの減剤数に応じた評価に加え、処方の把握・評価・調整など取組のプロセスを評価する方向だ。
 重複投薬の解消の推進とともに、かかりつけ機能を評価した地域包括診療加算及び同加算届出で算定可能となる機能強化加算の届出増が見込まれる。かかりつけ機能の底上げに向けて、かかりつけ点数の届出等の有無に関わらず、処方調整に取り組む全ての医療機関への評価も必要である。

 

オンライン対象拡大が焦点

 オンライン診療関連点数は、いわゆる遠隔診療を念頭に、過疎地や離島での緊急時の利用や患者の側に主治医がいる場合に遠方の専門医との間で利用など、6月の「オンライン診療指針」の改訂内容に則して一部緩和が図られる見通しである。
 他方、現役世代での生活習慣病の治療中断対策として▽30分以内に対面診療可能▽初診から半年は同じ医師が毎月対面診療などの要件の緩和を求める支払側に対し、日医は診療上の安全性や治療再開に係る有効性が不明瞭と強く反対している。
 生活習慣病や難病等に限定されている対象疾患の対象拡大を巡っては、厚労省は「学会から提出された医療技術評価提案書のエビデンス」を踏まえるとして、慎重な姿勢を示している。政府の未来投資会議では「疾患制限の撤廃が必要」との声も見られ、引き続き審議の動向が注視される。

 

有床診入院料は大幅引上げを

 有床診療所はここ20年間で施設・病床数とも6割減と厳しい環境に置かれる中、手厚い診療体制の確保に向けて、医師・看護職員等を配置する診療所では加算基準を上回る人員を配置している(中医協、11月28日)。日医は、実態に見合って評価を充実すべきと求めている。また、急性期病棟からの患者の受入れに際して、他の入院基本料等と同様に、一般病床初期加算の算定期間を14日間(現行7日間)に延長することや他の医療機関と連携した栄養食事指導の評価などが検討されている。
 有床診は、基本的に病院と同等の施設基準を求められるにも関わらず、病院と比べ入院医療の評価が非常に低い。一般病床で病院の4割減の入院報酬である。入院基本料の大幅な引き上げが急務である。

 

複数医療機関の訪問緩和

 2018年度改定では、複数の医療機関からの同じ患者への訪問診療料の併算定が原則半年以内の形で認められた。他方、依頼先の医療機関が行う訪問診療の期間が半年以上に及ぶケースが半数近くあり、要件緩和が検討されている。日医は、多様な疾患に対応するため、月1回の算定制限も見直すよう求めている。他方、依頼した側の医療機関の2〜3割が依頼先の医療機関の訪問回数を把握していない現状が報告されており、「情報共有の要件化」を求める声が出ている。
 また、医療機関からの訪問看護について、訪問看護ステーションの評価と同様に、24時間体制やターミナル実施の機能・実績を持つ体制を評価する案が示され、診療側・支払側とも賛同している。

 

認知症・せん妄の入院患者焦点

 急性期病床では、2018年度改定において、認知症などに対する看護の手間を評価して導入された認知症・せん妄状態の患者(基準A)の取り扱いが大きな焦点だ。
 基準Aに当たる患者は、高齢で要支援・要介護者が多く、看護提供の頻度が多い傾向が報告されている。支払側は、「急性期で認知症やせん妄状態の患者を評価することは疑問」「療養病棟に移すべき」と強く求める一方、診療側は「手術や化学療法で認知症やせん妄が現れるケースもある」「地域の病院では、認知症やせん妄の患者を受け入れざるを得ない状況がある」と反論している。
 支払側の強い廃止・見直しの主張に対し、日本病院団体協議会では11月22日、基準Aの存続を求める緊急要望を公表した。在宅・施設の基盤が未整備な中、基準Aの廃止・限定は、入院難民の増加が危惧される。

 

地域包括ケア病棟は自院は転棟制限へ

 地域包括ケア病棟は、患者の術後管理、軽度急性期対応や在宅支援など地域に密着した役割を担うとされるが、依然、自院の急性期病棟からの受け入れが6割強を占め、特に400床以上の病院で多いと報告されている。
 厚労省は、自院内の転棟制限とともに自宅・施設からの緊急時受け入れと在宅・生活復帰への支援を強化するよう求めている。中医協(12月6日)では、200床以上の病院について自院の一般病床から地域包括ケア病棟への受け入れを一定制限する案が示されている。合わせて、訪問診療や介護保険サービスなど在宅医療の提供実績の基準引き上げや看取り指針の策定病棟の拡大などが検討されている。
 外来・入院に比べマンパワーを要する在宅医療はじめ、地域に密着した様々な機能を求める以上、人員の確保・養成も含めた診療報酬の十分な手当が求められる。

以上