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金パラ「逆ザヤ」解消を―保険材料なのに持ち出し

全国保険医新聞2019年12月15日号より)

 

医院経営を揺るがす

 歯科治療でよく使用する金属材料の金パラ(歯科鋳造用金銀パラジウム合金)について、保険償還される価格よりも歯科医療機関が購入する価格の方が高い「逆ザヤ」問題が生じている。金パラを使用した治療をするほど「逆ザヤ」は大きくなり、歯科医療機関の経営を揺るがし兼ねない。保団連では「逆ザヤ」問題の解消を目指して制度改善を求めている。

 

保険価格より2割以上割高

 歯科治療の中では、歯冠修復のために金属製のかぶせ物(インレー、クラウン)などを歯の欠損部分に装着する。この際に主な金属として使用されるのが金パラだ。
 この金パラに係わっては、保険材料にもかかわらず、最近では保険価格よりも2割以上高く業者から歯科医療機関が購入せざるを得ないという「逆ザヤ」問題が生じている。
 図1では、そうした状況の一例として、「逆ザヤ」の状況を整理している。一般に取り引きされている30グラム単位で見ると、保険で償還される価格(2019年10月以降)は、5万250円(税込)なのに対して、市場価格は6万5,000円(税込)前後と2割以上も割高になっている。
 福岡歯科協会理事会の抗議声明(8月29日付)では、こうした現状に対する即時解消を求め、過去10年間の「逆ザヤ」は約250億円を上回ると試算している。
 つまり、治療すれば治療するほどその「逆ザヤ」分は歯科医療機関が負担せざるを得ず、このような状況が続けば、これまでの影響に加えて、さらに歯科医療機関の経営に大きなマイナスの影響が出てしまう。

 

価格変動が反映されにくい

 金パラに「逆ザヤ」が生じる主な要因は、金パラの主な含有金属(金、銀、パラジウム)が投機的に取引される影響で価格変動が大きく、長期的に価格が高騰していることだ。そして、診療報酬改定時の価格改定や「随時改定」がその価格変動に臨機応変に対応できていないことが挙げられる。
 金パラなどの歯科用貴金属材料は、すべての特定保険医療材料と同様に、市場価格調査(特定保険医療材料価格調査)をふまえて、診療報酬改定時に価格改定(点数改定)が実施される。
 しかし、金パラは、日々の素材市場価格の変動に影響を受けて、歯科医療機関が購入する際の市場価格も変動する。さらに、ここ10年では、市場価格の高騰傾向が続き、診療報酬改定時に価格改定されても、その後、歯科医療機関では、保険の価格よりも高い価格で金パラを購入せざるを得ない状況が続いている。
 長年の状況を勘案して、2000年度からは、歯科用貴金属においてのみ「随時改定」という診療報酬改定の間の期間で、6カ月おきに価格調整する仕組みが導入されているが、この「逆ザヤ」を解消するに至らないのが実態である。

 

まず「随時改定」の制度改善

 「随時改定」は診療報酬改定時の価格改定と異なり、金パラという合金の市場価格を調査しない。かわりに、金、銀、パラジウムといった素材価格について、一般に公開されている商品取引所の市場価格データを参照、推計して改定している。また、図2のように、変動幅を推計した値が「±5%を超える場合」に改定するといった条件がついているのも特徴だ。推計値の変動幅が5%以下の場合は価格改定されず、据え置きとなってしまう。
 「随時改定」という仕組みがあっても、現状のような「逆ザヤ」が生じる背景には、市場価格調査をせずに素材価格データからの推計だけでは、合金の市場価格の変動を補足できていない状況があると考えられる。
 さらに、推計値の変動幅が5%以下の場合は価格改定されず、据え置きとなってしまうことも、その状況に拍車をかけている。
 保団連では、こうした「逆ザヤ」問題を少しでも解消するために、「6カ月ごとの随時改定における『5%の増減』ルールを見直し、実勢価格との乖離が少ない措置を講じること」などを要望している。
現場では、市場価格が上昇していても、随時改定が実施されないということもあり、実感との乖離が生じていることから、着実に随時改定が実施されることを求めている。

 

価格改定と現場実感の乖離

 金パラの保険価格は、2年に1度の診療報酬改定時の材料価格改定の間に「随時改定」として3回の価格改定の機会がある(図)。改定するかどうかの判断は、通常、1月頃と7月頃の中医協で行われるため、改定の判断材料となる素材価格データはその中医協以前の時期の素材価格データになる。
「随時改定」により改定された価格は、改定が実施される時期の合金価格とタイムラグが生じ、制度上は順当な改定の手続きを踏まえた対応がされていても、現場の実感とは乖離が生じてしまう。

以上