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維持期リハの廃止撤回求め厚労省要請
受け皿不足、質低下、状態維持が困難

全国保険医新聞2019年12月25日号より)

 

厚労省に要請する保団連役員

 要介護被保険者等の外来維持期リハビリテーションが2019年3月末で廃止された。保団連はこれまで、廃止されればリハビリの提供が困難となり、移行後のリハビリの質低下は避けられないとし、厚労省に繰り返し廃止撤回を求めてきた。廃止後の影響を把握するため全国アンケートを実施。介護保険に移行した患者は3割にとどまり、1割が何らかの理由で介護保険へ移行せず「終了」していることがわかった。保団連は調査結果を基に12月4日に4度目の厚労省要請を実施し実態把握と廃止撤回を求めた。

 

リハビリの質担保できない

解説 維持期リハ廃止問題
 脳血管疾患等、廃用症候群、運動器の各疾患別リハビリテーションが必要と認められる患者のうち、算定日数上限(例えば脳血管疾患等は180日)を超え、要介護・要支援の認定を受けている外来患者については、1日13単位まで「要介護・要支援者の維持期リハビリテーション料」を算定することができた。
 厚労省は、急性期、回復期のリハビリテーションは主に医療保険、維持期のリハビリテーションは主に介護保険、という医療と介護の役割分担を掲げており、2012年診療報酬改定時に廃止が示され、3度の経過措置延長を経て今年3月に廃止された。

 維持期リハは、2012年度改定で廃止が示され、3度の経過措置を経て今年3月末で廃止された。
 廃止が3度も延期された背景には、リハビリの質の担保が困難なことがある。リハビリを提供する医療機関は、専従する人員(PT・OT・ST)の確保が困難な状況だ。介護保険での点数が低いことも通所リハビリテーション施設の開設が進まない理由だ。
 患者側からも通所リハリハビリテーションでの質の担保に対して不安の声が出されている。

 

実態はリハビリ継続困難

 保団連は、維持期リハ廃止によって必要なリハビリが受けられない患者の実態を把握をするため、京都協会の協力のもと、全国の協会・医会へアンケート調査を呼び掛けた。9月初旬から11月初旬までの2か月間で1,117件の医療機関から回答を得た(図1、2)。
 アンケートでは、まず算定日数上限に達した患者のうち、介護保険へ移行した患者は約3割となった一方、維持期リハ継続の必要があったが、何らかの理由により介護保険へ移行せず終了した患者は1割いたことが明らかとなった(図3)。また、算定日数上限に達したのち、その後の状況を把握している患者は約半数、そのうちなんらかの困難が生じている患者の割合は約2割に上った(図4)。
 自由記載の具体例の中には、「通所リハの事業所が少なく、地域差もある」「言語聴覚士がいない」などと受け皿が不足している実態や、「介護保険でのリハビリが不十分で関節可動域が制限され筋力低下が生じている」、「歩行能力が低下していき、数か月後に転倒し骨折した」など、介護保険でのリハビリでは、「状態の維持」ができていない事例など、維持期リハ廃止により、必要なリハビリが受けられず制度のはざまで苦しむ患者の実態が明らかになった。

 

厚労省「体制整備必要」

 全国アンケートをもとに保団連は、12月4日に4度目の厚労省要請を実施。武田浩一医科社保部長、山崎利彦社保担当理事、京都協会の飯田哲夫理事(保団連副会長)らが参加し、▽維持期リハの廃止撤回▽早急な実態把握と対策をとること▽当面、困難事例については算定を認めること―の3点を求めた。要請では全国アンケートと併せて京都協会が実施したアンケートの結果も示しあらためて維持期リハ廃止の撤廃を訴えた。
 保険局医療課の担当者は、「診療報酬検証調査の内容を検証しているところで、参考にさせていただく」と述べた。
 老健局老人保健課の担当者は、「まだ、病院でリハビリ施設を開設していないところがある。体制の整備を進めていきたい」と受け皿が不足していることを示唆した。
 山崎理事は、「厚労省が進めようとしている介護保険への移行は、アンケート調査結果からリハビリの体制が不十分だという実態が明らかになった」と指摘、十分な制度として整うまで、なんらかの措置を講じることを求めた。担当者は、「平成30年度の同時改定で大幅に見直し、丁寧に対応してきた」と応じた。

 

リハビリは医療保険で

 アンケートでは半数の医療機関から「要介護被保険者等の外来維持期リハビリ算定終了の撤廃」や、「介護保険リハビリの優先原則の撤廃」を求める声が出された。抜本的な制度改善が求められる。
 また、保団連が診療報酬次期改定に向け取りまとめている「2020年度診療報酬改定に向けた保団連要求」でも、維持期リハの廃止撤回を求めており、「そもそも維持期を含めてリハビリテーションは、医師が指示するPT・OT・ST等の専門職種による医療行為である」と主張している。
 今回、明らかとなった実態を改善するためにも、患者の病態に応じた、きめ細かな対応ができる医療保険に戻すことを要求している。

 

解説 維持期リハ廃止問題

 脳血管疾患等、廃用症候群、運動器の各疾患別リハビリテーションが必要と認められる患者のうち、算定日数上限(例えば脳血管疾患等は180日)を超え、要介護・要支援の認定を受けている外来患者については、1日13単位まで「要介護・要支援者の維持期リハビリテーション料」を算定することができた。
 厚労省は、急性期、回復期のリハビリテーションは主に医療保険、維持期のリハビリテーションは主に介護保険、という医療と介護の役割分担を掲げており、2012年診療報酬改定時に廃止が示され、3度の経過措置延長を経て今年3月に廃止された。

維持期リハ廃止影響調査
実施主体 全国保険医団体連合会
調査期間 2019年9月11日〜11月8日
調査対象 2019年8月1日時点で脳血管疾患等リハビリテーション料あるいは運動器リハビリテーション料の施設基準を届け出ている医療機関
回収数 1,117医療機関(31保険医協会・医会)

リハ打ち切り後の具体例や困難事例
介護保険への移行をすすめたが、月の単位が現行サービスでいっぱいになっていたため、調整がつかず、やむをえず、消炎鎮痛での対応となった
維持期リハ廃止以後、消炎鎮痛処置に切り替えたが、筋力低下、歩行能力低下をきたし、入院、自宅退院困難となった
歩行能力が低下していき、数か月後に転倒し骨折した
介護保険でのリハビリが不十分で関節可動域制限筋力低下が生じている
通所リハビリテーション事業所の数が少なく、また地域差もある
地方では介護保険でのリハビリ受入数も十分ではなく、通院での維持期リハビリテーションは必要と考える
介護保険の認定を取り下げ、医療で外来リハビリを継続
自費や医療機関のサービスとして、リハビリを継続した

 

以上