診療報酬改定、議論最終盤へ
機能強化加算、地域包括加算―「かかりつけ医」評価改善争点
(全国保険医新聞2019年12月25日号より)
2020年度診療報酬改定に向けて、中医協の議論は最終盤に入った。医療現場の実態に合ったかかりつけ医への評価が必要だ。
患者への説明疑問―機能強化加算
かかりつけ機能を持つ医療機関を評価する形で、18年度改定で全ての初診で算定できる機能強化加算が創設された。診療所の1割強が届け出ている。地域包括診療加算や小児かかりつけ診療料などかかりつけ医関連点数の届出とともに、健康相談や夜間・休日対応の実施に関する院内掲示が求められている。加えて健保連は、診察に際して患者にかかりつけ医を持つメリットなどについて文書も使い説明するよう求めた。それに対し日医は、個々の患者への説明は負担が大きいとして、院内掲示での説明にとどめるべきとしている。
議論が平行線を辿る中、厚労省から「患者に書面を渡し説明する」「必ずしも医師からの説明でなくてもよい」とする折衷案が示されたが、日医は▽後発品使用体制加算などに見られるように、医療機関の体制の説明を要件とする診療報酬は存在しない▽ほとんどの医療機関が明細書を発行しており、患者から疑問があれば答えている▽かかりつけ医機能の説明は日頃、保険者や行政などが周知に努めるべきなどとして、患者説明の要件化に反対した。
かかりつけ医を持つ意味や、当該加算が地域でかかりつけ医機能を発揮するために在宅や夜間対応などに必要な体制整備のコストを評価する趣旨などについて、患者に理解してもらうには困難な面も多い。医療従事者がかかりつけ医機能を発揮できるような手当・支援こそが必要である。
現場合った緩和を―地域包括加算
糖尿病や高血圧など複数の慢性疾患を持つ患者について、医師が継続的に全人的な医療を行った場合、地域包括診療加算が再診料に上乗せされる。届出は診療所の約5%強にとどまる。
診療所では、複数医師の配置、24時間の往診体制等の確保、院外処方の場合は常時対応する薬局との連携や、外来患者の訪問診療への移行実績数などの要件を満たすことが困難との声が多い。他方、患者がかかりつけ医を決めた理由では、「どんな病気でもまずは相談できる」「専門医への紹介」「病歴や家族背景などの把握」が多い一方、「夜間・休日でも受入れや連絡などが可能」「往診・訪問診療など在宅医療の実施」を求める声は少ないことなどから、厚労省は、時間外対応や在宅医療などで要件緩和を提案している。
日医も「小規模医療機関では患者数が少なく、訪問診療の実績などを満たすことは困難」として、医療機関の現状を踏まえた適切な要件とするよう求めている。患者・国民が期待するかかりつけ医の発揮に向け、実態に合った柔軟な要件のあり方が求められる。
以上