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高薬価構造根本は手つかず
薬価制度改革 部分改善に留まる

全国保険医新聞2019年12月25日号より)

 

 2020年度薬価制度改革は年末の取りまとめを迎える。売上見込み超過の品目や効き目変更に伴う売上増に対する薬価引下げなど部分的な改善が図られるものの、原価計算、新薬創出加算など大本にある高薬価構造は手付かずのままだ。

 

情報は無条件開示、薬価引上げ中止を――原価計算

 原材料などのコストを積み上げて算定する原価計算方式では、製品総原価に関する情報開示度に応じて補正加算を引き上げる仕組みは継続することとされた。18年度の「抜本改革」で導入されたが、事実上、情報開示しなくても18年度以前の水準の薬価が保証されることから、大半の品目で情報開示は最低の水準である。情報開示先もあくまで非公開の薬価算定組織である。情報開示の高さを理由に、18年度以前に比べ格段に高い薬価が算定され、薬価の高騰に拍車をかけている。
 さらに、高額新薬の主流を占めつつあるバイオ医薬品について、情報開示などを理由に薬価算定で考慮される研究開発費の積み増しが認められる。情報開示度に応じた薬価引上げの仕組みは廃止し、原価情報は無条件に中医協に開示すべきである。

 

画期性ないなら新薬加算分控除を――類似新薬

 似た薬の薬価を基に値付けする類似薬効比較方式(T)では、新薬が新薬創出加算の対象外でも、類似薬に含まれる新薬創出加算額は控除せず薬価算定している。今回、新薬収載から3回目の改定(最長6年)までに効能追加で新薬創出加算の対象にならなければ、比較薬の累積加算分を引き剥がすとした。しかし、類似薬の画期性など評価して新薬創出加算を付けている以上、算定される新薬が新薬創出加算の対象外であれば、類似薬の当該加算分は引き剥がして薬価算定されるべきである。

 

抜本是正が必要――新薬創出加算

 新薬の薬価を維持する新薬創出加算については、世界に先駆けて開発される品目や薬剤耐性菌の治療薬などを評価対象に加える。日医はなし崩し的な品目拡大にならないよう釘を刺している。
 他方、当初見込みよりも大幅に売れた品目の薬価を別途引き下げる市場拡大再算定について、2度目の対象となる場合、より厳しく引き下げる。同様に、主な効き目が変更された場合に、同種の薬に比べ薬価が著しく高く売上も大幅に拡大する品目について薬価を引き下げるとした。ただし、両者とも該当品目は限定的と見込まれる。
 薬剤費は医療費の約22%を占めるが、薬剤料を包括するDPC等も加味すればさらに高いと推測される。これは英独仏など約15〜19%と比べても高い。2割の数量に満たない新薬が薬剤費の6割近くを占める。薬剤費の抑制に向けて、高薬価構造の抜本的な是正が必要である。

以上