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低所得者いじめの計画−高齢者にとって医療と介護は一体

認知症の人と家族の会代表理事 鈴木森夫氏
全国保険医新聞2020年1月25日号より)

 

 政府が進める社会保障削減策は当面、介護制度の負担増を先行させる計画だ。認知症の人と家族の会代表理事の鈴木森夫氏(写真)に当事者の立場から見た問題などを聞いた。

 

高齢者にとって医療と介護は一体

認知症の人と家族の会代表理事
鈴木森夫氏

 具体化が進められている介護の負担増のひとつは、特養などの施設に入所する低所得者への食費・居住費の「補足給付」から食費部分を削減するものです。月の年金収入が10万円程度の人に対して月2万円超の負担増を強いるなど、低所得者いじめにほかなりません。負担増の対象者は入所費用が8万2,000円となり、年金のほぼ全てを費やさなければなりません。
 サービス利用料に上限をかける高額介護サービス費制度でも所得に応じた上限額引き上げが狙われています。過去に利用料2〜3割負担が導入された際、政府は高額介護サービス費制度が歯止めになると説明してきました。しかし、限度額が引き上げられるのであれば、負担は天井知らずです。
 この他、財務省は利用料の原則2割化、3割負担の拡大、ケアプラン有料化などを求めています。これらは、利用者や家族にサービス利用を抑制させ、「介護の社会化」という制度の理念に逆行するものです。

 

受診抑制も招く

 介護の負担増は、高齢者の受診抑制も招きます。
 高齢者の9割が何らかの慢性疾患を抱えており、医療と介護が一体で保障されてこそ安心して生活できます。しかし介護で負担増になれば、経済的な理由から必要な受診を控える人も出てくるでしょう。75歳以上の窓口負担2割化などが実行されればさらに深刻です。
 いま「共生と予防」を柱にした新しい認知症施策が動き始めています。高齢者の5人に1人が認知症になる時代、認知症になっても安心して暮らせる社会を目指す取り組みは一層重要です。
 しかし支援の要である介護や医療の負担増は、専門職による重症化予防を遠ざけ、介護の不安や負担を家族の中に閉じ込めることにつながります。
 認知症の人や高齢者、家族が将来に希望をもてるようにするために、利用者・患者負担増に強く反対します。

以上