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ここがポイント診療報酬改定―特徴と課題を考える

全国保険医新聞2020年2月15日号より)

 

 中医協は7日、2020年診療報酬改定の項目概要を厚労大臣に答申した。医科では、急性期病床の削減を進めるとともに、初再診料は据え置きつつかかりつけ医機能の強化を図る。働き方改革として、救急病院の負担軽減を強化する。歯科では、かかりつけ関連点数を軸にした差別化の拡大や院内感染防止対策、重症化予防などが特徴だ。

 

医科―急性期病床削減、かかりつけ評価強化

地域包括加算の要件緩和

 かかりつけ医機能の評価では、認知症や高血圧等の慢性疾患を継続管理する地域包括診療加算(再診料加算)について、点数は据え置かれるが、時間外対応で基準を満たす場合、複数診療所の輪番で電話等の問い合わせに対応する時間外対応加算3の届出でも認められる。現在、同加算3は191の診療所が届け出ている。
 かかりつけ医機能を持つ医療機関を評価した機能強化加算(初診料加算)では、従前求めてきた健康相談や夜間休日対応などに関わる院内掲示に、専門医への紹介を行う旨を追記するとともに、掲示内容を記した書面を配置し、患者の求めに応じて交付することなどが追加される。かかりつけ医機能の周知・普及を進める。
 小児かかりつけ診療料と小児科外来診療料では、対象患者が3歳未満から6歳未満に拡大されるが、院外処方では実質上算定点数が引き下げとなる。小児科外来診療料も届出が必要となる。
 かかりつけ医機能点数は依然、医療現場の実態に見合った評価とは言い難い。初再診料引き上げも含め、より広範な医療機関の底上げにつながる評価が求められる。

 

妊婦加算廃止、情報提供料へ

 凍結中の妊婦加算は点数表より削除され廃止となる。事実上の代替措置として、紹介元の産婦人科医療機関に妊娠患者の診療情報を返した場合、紹介先が診療情報提供料Vとして150点が算定可能になる。
 紹介元・紹介先のいずれかが地域包括診療加算などかかりつけ医機能関連点数を届け出ている場合も、提供料Vが算定できる。医療機関間の連携推進に向けて「かかりつけ医機能」を持たない医療機関でも算定可能とすべきである。
 その他、電話等での再診の際に、救急医療機関の受診を指示し、受診先に必要な情報を提供した場合、診療情報提供料Tを算定可能とする。
 投薬では、院内処方で調剤料が2点、調剤技術基本料が6点、院外処方で一般名処方加算が1点、各々引き上げられる。

 

オンライン診療規制緩和

 オンライン診療料では、緊急時対応について、オンライン診療を担う医療機関による体制の確保から、急変時に患者が速やかに対面受診できる医療機関を事前に説明する形に緩和される。
 オンライン診療に入る前の対面診療の期間が6月以上から3月以上に短縮されるほか、「慢性頭痛」の患者などにも実施可能となる。緊急時対応の緩和や慢性頭痛の追加には、中医協でも日医委員から異論・反対が出るなど、医療安全の確保などが危惧される。
 在宅医療では、複数医療機関が連携して行う訪問診療について、半年を超える場合、主治医側が連携先と診療状況を共有することが必要となる。

 

有床診の評価改善

 有床診は、地域で担う役割を踏まえ評価が改善される。入院患者受け入れを評価する一般病床初期加算は点数が50点引き上げられるとともに、算定期限も7日から14日まで延長される。手厚い体制を評価した医師・看護配置、夜間看護や看護補助者に係る加算も各々10点〜32点引き上げられる。有床診は、院長が高齢化し後継者も不足する中、当直看護師の不足や施設の老朽化など困難な状況が続く。入院基本料引き上げ含め抜本的な手当てが求められる。

 

7対1病床の削減促進

 7対1看護に相当する急性期一般入院料1では、該当患者割合をめぐり、診療側と支払側で意見がまとまらず、前回改定に続き公益委員による裁定となった。
 従来の評価方法となる必要度Tでは30%以上から31%以上に、DPCデータを活用する必要度Uでは24%以上から29%以上に引き上げる。厚労省の試算では、現在同入院料1を算定する4分の1前後の病院が要件を満たせなくなる。地域での入院医療の確保が懸念される。

 

救急病院の負担軽減に重点投下

 医師の働き方改革として、診療報酬0.08%を使い地域医療体制確保加算(520点)を新設する。救急搬送を年2,000件以上受け入れる病院で勤務医の負担軽減などを実施した場合が対象となる。
 救急搬送が年1,000件以上の病院は、救急搬送看護体制加算(夜間休日救急搬送医学管理料)に加算1(400点)を設けて評価する。救急規模では、確保加算で900病院、体制加算1で544病院が対象と見込まれる。
 その他、医療事務、看護職員・看護補助者の配置に係る加算点数引き上げ、常勤配置や専従要件の緩和、退院に向けた患者への共同指導やカンファレンスでのICT機器の日常的利用などが認められる。

 

歯科―重症化予防含む、長期維持管理に誘導

機能分化路線が継続

 歯科疾患管理料(歯管)の初回算定が初診月の場合は80/100に減算される一方で、継続管理が6カ月を超える場合に算定する「長期管理加算」(か強診120点、それ以外100点)が新設された。
 減算に根拠はなく、加算評価も施設基準と点数項目の関係性がないことなど、か強診に係る諸問題をそのままに同様の差別化をはかり、歯科診療所間の格差を拡大させるという点が課題だ。

 

院内感染防止対策の施設基準存続

 前回改定で導入された院内感染防止対策(初診料の注1)に係る施設基準に院内での職員研修要件が追加され、初診料261点(現行に+10点)、再診料53点(同+2点)となった。
 今後においても、すべての歯科医療機関で院内感染防止対策を費用面で無理なく実施できる対策費用を考慮することが課題だ。
 また、施設基準及び未届の場合の減算規定は存続したままであり、廃止を求めていく。

 

重症化予防に係る点数評価の追加

 現行の歯周病安定期治療(SPT)の対象とならない歯周ポケットが4ミリ未満の患者で、歯肉には炎症がある状態などの場合に重症化予防を目的に包括管理を行うものとして「歯周病重症化予防治療」が新設された。
 ただし、導入にあたっては、不当な包括化を行わないことや診療現場が混乱しないよう取り扱い等の周知徹底が必要だ。

以上