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「一般病院200床」にも拡大―紹介状なし受診時の定額負担
政府「検討会議」で方向性

全国保険医新聞2020年3月25日号より)

 

 政府の全世代型社会保障検討会議は、その中間報告(2019年12月)で、紹介状のない患者が大病院を受診する際の定額負担について、対象病院を拡大し患者負担を増額する方向性を示した。患者の負担増と医療へのアクセスに困難を来し、地域の医療にひずみをもたらす。理解をひろげ、具体化を許さない世論づくりが求められる。

 

20年改定を経て、さらに拡大

 紹介状のない患者が大病院を受診した際の定額負担の徴収は、2016年から義務化されている。現時点で対象とされる病院は「特定機能病院」と「許可病床400床以上の地域医療支援病院」。この4月からの診療報酬改定で、地域医療支援病院について、200床以上の一般病床を有するものに拡大される。
 現在、定額負担の額は、初診5,000円以上(歯科3,000円以上)、再診2,500円以上(同1,500円以上)とされている。

 全世代型社会保障検討会議の「中間報告」は、こうした仕組みを「大幅に拡充する」と明記。「患者の負担額を増額し、増額分について公的医療保険の負担を軽減するよう改め」、「対象病院を病床数200床以上の一般病院に拡大する」ことを方向性として示した。対象病院の拡大で、定額負担徴収が義務付けられる病院は全病院の約16%になる(表)。
同会議は今夏にまとめる最終報告に向けて検討を進め、厚労省の審議会でも議論が進められている。

 

地域医療にひずみ

 定額負担拡大の狙いについて、「中間報告」は、「大病院への患者の集中を防ぎ、かかりつけ医機能の強化を図る」などとしている。
 しかし、200〜300床程度の一般病院が「大病院」といえるかどうかの問題がある上、地域によってはこうした病院がかかりつけ医の機能を果たしているところもある。一律の義務化は、病院の外来の縮小を招来し、患者の外来通院先が確保できなくなるなど、地域医療にひずみを生じさせるおそれもある。

 

「ワンコイン制」への先鞭か

 患者負担を増やした分、公的医療保険の給付削減が狙われている。
 紹介状なしの病院受診時定額負担は、選定療養の位置付けだ。しかし現在の定率負担(原則3割)に加えて、定額負担を徴収することは、医療に係る保険給付の割合について、将来にわたり7割を維持するとした2002年健保法改正附則2条に実質的に反することになる。この増額分は、公的医療保険に繰り入れられる。
 今回の「中間報告」では、「外来受診時定額負担については」、「まずは」、紹介状がない大病院外来受診時の定額負担の仕組みを大幅に拡充するとしている。いわゆる「ワンコイン制」の外来受診時定額負担の導入を見通したものともいえ、問題は、大病院受診にとどまらない。
 「ストップ!負担増」請願署名の取り組みを広げで、政府の狙いを押し返す世論を作ることが重要だ。

以上