ホームニュースリリース・保団連の活動医療ニュース 目次

コロナ禍と医療現場

力尽くすも病院疲弊―徹底的な経営支援を

全国保険医新聞2020年6月15日号より)

 

医療提供の危機

 新型コロナウイルス感染症患者受け入れの最前線となった各地の病院は、防護具不足や通常診療の患者減などの困難に直面しながら、診療に奮闘してきた。しかしその中で大幅な赤字を抱えるなど、今後の医療提供が危ぶまれる事態が進行している。現場の実態を紹介する。

 

疲れ果てた末に大赤字―京都協会監事 増田道彦

病院の外にプレハブで設置された
発熱外来(手前)

 当院は、京都府南部の宇治市にあり、救命救急センターを有する473床の病院です。2月上旬帰国者・接触者外来を設置。2月下旬には発熱外来を一般外来と離れた時間外外来で診ることに決め、救急総合診療科と心臓血管内科でCOVIDチームを編成(呼吸器内科はコンサルト役)し対応しました。
 京都府では3月下旬から陽性者が急増し、入院先が確保できず自宅待機者が続出しました。府内には感染症病床は38床しかなく、結核病床や一般病床で受け入れることになり、当院は救命救急センターがあるため、重症者と中等症の受け入れを要請されました。
 4月1日からコロナ陽性者が入ってきだし、4月中旬には入院患者が10人となり、下旬には気管挿管患者が5人、そのうち90キロを超える肥満患者が3人いて、腹臥位管理等のケアで、医師看護師等の心身疲労がピークとなりました。擬似症(肺炎等があるが PCRの結果が未)の入院も増え続け、10人を超える時もあり、隔離病棟内の感染対策は大きな負担でした。
 4月中旬には発熱外来を院外のテント(6月からはプレハブ)に移し、午前・午後に分けて、医師を2人ずつ計4人配置にし、60歳以下で外科系含めて全病院的に医師の負担を分散しました。
 4月と5月で発熱外来受診は1,238人、PCR検査数564件、これだけ頑張って、疲れ果てたあげく、4月は収入が大幅に減り、感染防御関連費用等支出が増えて、久しぶりの大赤字となりました。

 

1カ月で1億円超える損失―同仁会耳原総合病院病院長・大阪協会 奥村伸二

病院入口で全ての来院者に
検温と問診を実施

 当院は大阪府にある病床数386床の急性期病院です。新型コロナウイルス感染症の対応は、大規模な自然災害の対応に匹敵する活動になりました。
 新型コロナ対応で最初に問題になったのが、マスクやエプロンなどPPE(個人防護具)の不足でした。まったく供給が追い付かず、本来使い捨てのものを洗って使い続ける、ゴミ袋で職員が代用品を作るなど通常なら考えられないようなことがいまも続いています。
外来対応から始まり、その後、疑似症の入院対応が増えてからは、院内感染予防のため疑似症患者を一つの病棟に集約しました。これにより4人部屋では閉鎖ベッドが大量に生じました。また、当該病棟で空床があっても他疾患の患者は入れられないため、その空床も含めて大きな損失を生みます。
 コロナ対応のための外来縮小や健診・ドックの中止の影響も合わせると月1億円を超える損失を生みました。
 大阪府は5月下旬から流行の第1波は収束しつつありますが、第2波、第3波があると言われており、新型コロナの対応は年単位になります。しかし、長く続く診療報酬抑制政策のもとで、病院経営は余裕のないところが少なくありません。当院も同様で、4月〜5月のような患者減が年単位で続けば資金繰りに支障を来しかねません。
 第1波において日本で医療崩壊が生じなかったのは、感染症指定医療機関だけでなく、多くの医療機関がそれぞれ外来の受入れ、疑似症の受入れ、陽性受入れで役割を分担して担い、奮闘したからこそ、です。それを国は評価し、設備補助金や診療報酬前払いだけでなく、抜本的な経営支援をしてほしいと思います。同時に、医療・社会保障抑制政策を転換する契機にしなければいけないと思います。

 

「第2波」で救急が逼迫―健和会大手町病院院長・福岡協会 吉野興一郎

コロナ患者などの受け入れに
奮闘してきた吉野氏

 北九州市は新型コロナウイルス感染症(COVID19)「第2波」の真只中にあります。医療機関は多い地域ですが、2〜3次救急を担う6病院(6月4日現在)がクラスター発生等で救急外来の診療制限中で、市内の救急医療は逼迫しています。COVID患者のみならず通常救急患者の受け入れも一部は市外に求めざるを得ない状況です。
 当院は499床の地域医療支援病院です。「断らない医療」を旗印に市内の救急の約14%を担っており、COVID流行期中でも発熱を含む救急患者を分け隔てなく受け入れています。急性期の1病棟を半分(約30床)閉鎖して個室6床を用意、COVID疑い対応病床として看護体制を強化して運用、PCR検査陽性患者は市内の公的病院を中心としたCOVID病床に転院としています。職員の肉体的・精神的負担、感染対策の人的・物的費用は大きく、病棟一部閉鎖で病床稼働率が低下しているため経営的にも厳しい状況です。
 診療報酬上の支援はCOVID疑い患者にはほとんどありません。このままでは経営的要因による医療崩壊を招きかねません。最前線で奮闘している医療者・医療機関を守るため、財政支援を抜本的に強化する必要があります。
 今後も感染の波が繰り返し発生する可能性があります。対策が長期間に及ぶことを想定して、地域ごとに行政と各医療機関の連携体制を見直し、COVID患者と疑い患者、通常の救急患者に対応する体制の整備が必要と思います。

以上

ホームニュースリリース・保団連の活動医療ニュース 目次