コロナ禍 薬価調査は中止を
―中医協 診療、卸売・製薬から異論・反発
(全国保険医新聞2020年6月15日号より)
毎年改定 来年度スタート控え
厚労省は5月27日、中医協薬価専門部会を開催し、薬価調査を9月に実施する日程を提案した。新型コロナウイルス感染拡大による混乱の収束が不透明な中、診療側委員、医薬品卸・製薬メーカーなど専門委員より異論・反論が相次いだ。
「骨太の方針2018」は、2年に1度の通常の薬価改定の合間の年にも薬価改定を行うとしている。スタートとなる21年4月の薬価改定に向けて薬価調査のあり方が議論となる。厚労省は、予算編成の関係上、「9月の調査実施に向けて、6月中に調査の制度設計を固める必要がある」とした上で、先立って新型コロナ拡大に伴う価格交渉や医薬品流通への影響に鑑みて業界団体からヒアリングを行うと提案した。日米欧製薬3団体と卸連が対象となる模様だ。
現場の実態踏まえ慎重対応 診療側
通常改定に倣い9月調査を想定する提案に対し、日医委員は「コロナ対応で医療崩壊の瀬戸際にあり回復の目途も不明だ。現時点で調査手法が全くイメージできない」とし、「ヒアリングを踏まえた上で今後の対応を考えるべき」とけん制した。
先立つ5月20日の記者会見で、日医の横倉義武会長は、調査負担に鑑みて「(中間年の改定について)極めて慎重に考えるべき」と述べている。日医委員は、医療・流通現場の状況を十分に踏まえるよう議論に待ったをかけた形だ。日薬委員も「9月実施の議論の進め方は問題」とした。
本年調査は困難 卸・製薬
特に、通常の薬価調査では営業所等の全数が対象となる卸と製薬メーカーの委員は、「本年の調査は困難」と反対した。卸代表の委員は「多くで見積書が提出されず、価格交渉もほとんど行われていない中、タイトな期間での交渉になる。医療機関側も外来の大幅減少、入院・手術の延期など通常と全く異なった状況」とした上で、価格交渉がまとまらないことにより診療報酬が減額されるペナルティーを避けようとして、「(購入全品目まとめた価格とする)単品総価契約などが大幅に増えかねない」と述べ、「本年の調査は極めて難しい」と強調した。他方、健保連や協会けんぽなど支払側は、政府方針で定めている以上、「関係団体は実施可能な調査のあり方を提案すべき」として議論は平行線をたどった。
新型コロナで医療現場や医薬品流通に多大な影響が及ぶ中、9月の薬価調査は中止すべきだ。
以上