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コロナ下で進む都立病院の独法化

都立病院の充実を求める連絡会 渡辺暢子
全国保険医新聞2020年6月25日号より)

 

 政府は新型コロナウイルスの感染が終息しない中でも、昨年9月に公表した公立・公的424病院リスト(現在440病院)に基づく再編・統合を進めようとしている。感染者が最も多い東京都では、この動きを後押しするかのように、都立病院等の地方独立行政法人化の動きが進んでいる。問題点や都立病院等が果たしてきた役割について、都立病院の充実を求める連絡会の渡辺暢子氏に寄稿してもらった。

 

 全世界がコロナ禍にあり、東京では緊急事態宣言解除後も連日2桁を超す感染者数が報告されています。このような状況の下で、東京都は2022年に8都立病院(5,118床)と6都保健医療公社病院(2,155床)を地方独立行政法人化するべく、今年3月31日「新たな病院運営改革ビジョン」を確定し、独法化準備予算を計上しました。厚労省が狙う全国の公立・公的病院の再編・統合を加速させる動きです。

 

狙いは400億円の削減

 地方独立行政法人化とは、「公共上必要だが自治体が直接実施する必要がない」と直接の都による運営から外すことで、「経営の自立化」「民間並みの効率化」が求められます。
 都立病院には感染症や精神科医療、救急医療などの「行政的医療」に、都の予算から8都立病院で年間400億円が支出されていますが、これを削減していくことが狙いです。
 都立病院は1879年(明治12年)赤痢・コレラ等の感染症、精神疾患、生活困窮者などのための医療機関として設立され、長い歴史の中で「社会的弱者のためにその時代の最高の医療を提供する病院」として整備されてきました。行政的医療=不採算医療は都立病院の重要な役割です。

 

コロナ患者受け入れの先頭に

 1月29日に中国武漢からチャーター機で帰国した感染者を受け入れたのが都立駒込病院と東京都保健医療公社荏原病院でした。3月時点で東京の感染症指定病院は15病院118床でその68%が都立病院・公社病院でした。現在もすべての都立病院、公社病院で新型コロナウイルス患者を受け入れ、治療看護にあたっています。また、軽症者が隔離されているホテルにも都立病院の看護師が派遣されています。

 

公立・公的病院再編の先鞭付ける

 連日メディアに登場している東京都の小池百合子知事は、コロナ対策で医療崩壊ギリギリの都立病院・公社病院を最大限に利用しつつ、独法化の準備を進めていることには全く触れてていません。
 東京都の動きは、国が狙う今後の全国的な公立・公的病院の「独法化」・再編・民営化の先鞭を付けるものと見ることができます。
 今、コロナ患者を受け入れた病院の経営危機と、受け入れなかった病院・クリニックでも経営が困難になっていることが明らかになり、日々メディアでも取り上げられています。
 本来、医療は公共的な社会資本として国・自治体が責任を以て運営すべき事業です。都立病院の充実を求める連絡会では、厚労省が進める公立・公的病院の再編・統合反対の運動と連帯し、地方独立行政法人化の狙いを広く都民に知らせ、これを断念させ、都立病院を充実させることを求めていきます。

以上

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