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毎年薬価改定 9月調査は中止すべき
医療提供体制の再建に全力を

全国保険医新聞2020年6月25日号より)

 

 政府の「骨太の方針2018」等では、現行の2年に1度の薬価改定の合間の年にも、全品目を対象とした薬価調査の結果に基づき、価格乖離が大きい品目について薬価改定を行うとしている。毎年の薬価調査・薬価改定だ。21年4月開始となる毎年薬価改定に向けて、9月予定の毎年薬価調査をめぐり中医協で議論が進む。保団連政策部は6月9日、薬価調査は中止し、医療提供体制の再建・整備に全力を注ぐよう政府に求める声明を発表した。医療界でも、調査見送りの要望が相次ぐ。

 

信頼性乏しい

 新型コロナウイルス感染拡大により、患者数の大幅な減少や処方日数の長期化など医薬品の使用実態や流通事情は激変している。コロナ収束も見通せない中、9月まで極めてタイトな交渉期間の上、卸売も安定供給に向けた配送活動に特化するなどで価格交渉もほとんど進んでいないと指摘されている。声明では、通常と大きく異なる状況の下、薬価調査を実施することで、かえって信頼性に乏しいデータが抽出されることに懸念を示した。
 また、声明では、改定品目は後発品のある先発品と後発品が中心となり薬剤費削減の効果には乏しい上、製薬メーカーが卸売に示す販売価格を高止まりさせる傾向が更に顕著になるなど、2年に1度の薬価改定の場合より薬価が高止まりしていくことが懸念されるとし、毎年薬価調査・毎年薬価改定自体を実施すべきでないと主張した。

 

見送り求める声 相次ぐ

 医療界でも薬価調査の見送りを求める声が相次いでいる。6月10日、日医、日薬、日歯は連名で、医療界はコロナ対応を最優先に総力戦で対応し、価格交渉もできていない中、「調査を実施しても、薬価改定に必要な適切な市場実勢価格を把握することは極めて困難」などとして調査を見送るよう政府に要望した。
 同10日の中医協のヒアリングでも、卸業界は「調査自体が難しく、無理に実施しても適切な取引データが得られない」と指摘し、日米欧の製薬業界の各代表も「コロナ治療薬・ワクチンの研究開発に取り組むとともに、全医薬品の安定供給に注力している」として薬価を調査・改定する状況にないと理解を求めた。続く総会では、病院団体の委員からも「正確な調査にならない」「コロナの第2、第3波に備えるべき」と見送りを求める声が相次いだ。15日には、日医の横倉義武会長は官邸で菅義偉官房長官に実施見送りを要望している。
 コロナ第2、第3波に備えて、医療提供体制の再建・整備に向けて、大幅な減収などに見舞われている医療機関への支援こそ急務だ。9月の薬価調査はじめ毎年薬価改定は中止すべきだ。

以上

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