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全国1万件のアンケート
医療機関9割で収入減 受診控えで症状悪化も懸念

全国保険医新聞2020年7月5日号より)

 

 保団連が4月末から5月にかけて行った新型コロナ感染拡大の影響に関する医療機関へ緊急アンケート(最終調査結果はこちら)には、約1万件の回答が寄せられた。4月の診療分について、9割近くの医療機関で外来受診患者が減り、3割の医療機関で保険診療収入は30%以上の減少となっていることが分かった。各協会・医会で独自に行われた調査でも同様の傾向が見られる上、4月以降の診療分にも影響が及ぶことが強く懸念される。保団連では、引き続き各協会・医会と連携して全国の状況を把握し、医療機関の日常診療の維持、改善に向けた取り組みを進める。

 

患者、保険収入とも3割が「30%以上減少」

調査の概要

本調査には31の保険医協会・医会が取り組み、29都府県で実施された。調査期間は4月28日から5月22日。各協会・医会を通じて送付・回収した。有効回答総数は1万742件で、医科7,116件、歯科3,626件だった。送付総数に対する有効回答数の割合は医科29.1%、歯科21.0%)。回答数は、都府県でばらつきがある。

 今年4月診療分の外来患者数は、前年4月と比べ、医科医療機関の86.6%、歯科医療機関の89.7%が「減った」と回答した(図1)。減少の程度が30%以上だったのは、医科で29.0%、歯科では33.9%だった(図2)。
 前年同月と比べた今年4月の保険診療収入も、医科の85.3%、歯科の85.4%が「減った」と回答(図3)。減少の程度が30%以上だったのは、医科で25.8%、歯科では31.8%だった(図4)。

 

小児科、耳鼻科、歯科訪問診療で影響大―診療所

 診療所(有床・無床)では、86.6%で外来患者数が「減った」。保険診療収入は85.6%で「減った」。外来患者数が30%以上減少したのは、29.7%。保険診療収入が30%以上減少したのは26.6%だった。
 標榜科別では小児科、整形外科、眼科、耳鼻咽喉科で、外来患者数、保険診療収入とも9割超の医療機関が「減った」と回答(図5、図6)。特に、小児科、耳鼻咽喉科では30%以上減少との回答が他科に比べて高く、7割に上った(図7、図8)。

 

 患者からの予約延期やキャンセルの依頼件数gが「増えた」との回答は、医科46.2%、歯科76.3%と、歯科が医科と比べて多いのが特徴だ(表1)。電話再診の依頼件数は、医科では「増えた」が60.6%なのに対して、逆に歯科では「減った」との回答が30.2%と高い(表2)。
また訪問診療を行っている歯科医療機関にその増減を聞いたところ、「減った」が63.1%と多数を占めた。「減った」程度について、「70%以上」との回答が3割近くになっている(表3)。

 

急性期で収入減が顕著―病院

 病院全体では85.7%が外来患者が「減った」、79.4%が保険診療収入が「減った」と回答。特に急性期の病院では96.2%で患者減、91.2%で保険診療収入減と特に顕著だ。
 外来患者減の程度は、17.5%の病院で30%以上の減少。保険診療収入減の程度は、11.5%の病院で30%以上の減少となっている。
 急性期の16.3%、療養の20.2%で外来患者数は30%以上の減少。保険診療収入は、回復期の22.2%の病院で、30%〜50%の減少だ。

 

損失補償を強く要望

 国・自治体等が実施している助成や融資について、申請の予定があるかを聞いた。
 医科では「申請した」4.9%、「申請を検討」28.9%だった。歯科ではそれぞれ、13.2%、44.3%で、いずれも医科より高い割合だ。
 国・自治体等に創設・拡充を希望する支援策については、医科・歯科とも「損失の補償(給付金)」、「人件費の補助」の順で要望が強い。以下、医科では「納税等の猶予措置」、「資金繰りの補助」が続く。歯科では、「資金繰り支援」「家賃等の補助」「納税等の猶予措置」について、約3割の医療機関が要望している。

 

慢性疾患患者や口腔機能低下に心配の声も

 アンケートでは受診手控えの影響について、「糖尿病などの患者が通院を止めているようだ」「長期処方を望む方が増えた」との回答が目立った。「受診の間隔が長くなり、悪化しても発見が遅れる」「収入減以上に、慢性疾患患者の今後の病状が心配」など、受診抑制による症状悪化を懸念する意見が寄せられた。高齢者がリハビリに来なくなったことで、骨折が増えたり認知症が進行するのではとの指摘もある。
 電話再診が増えたとして、糖尿病患者の血糖値の測定等ができないことや、対面と違って観察ができないため、本人も気づかない異常を見つけることができない、などと指摘する声もあった。
 歯科では「口腔内の状況は悪化している人が多いのでは」「70歳以上のキャンセル割合が特に高い」「メンテナンスに来ていた患者さんの受診が止まった」「入れ歯を2カ月はめたままの人がいる」など、患者さんの口腔状況悪化とそれによる免疫力の低下を懸念する声が目立った。「コロナ肺炎ではなく、誤嚥性肺炎になっているのではないか不安」、「コロナのストレスか、くいしばりが増え、脱離が多い」との声も多数寄せられている。
 学校休校で子どもの口腔衛生に与える影響を指摘する声も寄せられた。

 

マスクや消毒剤の不足が深刻

 4月の調査時点でのマスク等の衛生材料の確保状況を聞いたところ、2、3月時点のようなひっ迫感は薄れているものの、依然として不足感がうかがえる結果となった。
 医療用マスクについて「充足」との回答は、医科36.2%、歯科55.8%にとどまる。「在庫一月以内」と「既に在庫がない」とを合わせると、医科で61.6%、歯科42.1%に上った。
 手指消毒剤も、医科、歯科とも「在庫1週間から1カ月以内」が半数以上を占めた。
 防護服、ゴーグル、フェイスシールドについては、不足感が強い。防護服は、4割以上の医療機関で「既に在庫がない」。医科ではゴーグルやフェイスシールドも同様の状況だ。

 

歯科で4割近くが「診療日数・時間減」

 医療機関の診療の状況については「通常通り診療している」医療機関が多いが、医科では9割近くであるのに対して、歯科では通常通り診療しているのは56.8%。歯科では「診療日数・時間を減らしている」との回答が多かった(37.1%)。歯科では「休診している」も8.7%あり、歯科より高い割合になっている。
 「日数・時間を減らしている」「休診している」理由については、「感染を防ぐため」が医科・歯科とも6割を超え最多。以下、「緊急事態宣言が出されたから」「患者さんが減った」が続いている。

 

風評被害の不安多く

 「風評被害があったか」との問いには、医科で1割強、歯科で2割強が「ある」と回答した。
 具体的な例として、医科では、医療機関であるというだけで「陽性患者が出た」「職員が感染した」などの噂が地域に広がり、受診キャンセルや訪問診療拒否につながっているとの指摘が多かった。「防護服やゴーグルを身に着けての診察・応対」や、「車中、院外での診察」といった感染防止のための対応だけでなく、他の疾患での救急搬送や、院所の定期清掃・消毒を「陽性患者が出たため」と誤解され、噂が広まったという例も多かった。
 歯科では、テレビ報道との関係を指摘する記述が特に目立った。「テレビ等で『歯科は最も感染しやすい』などと報道以降、患者が減少した」「テレビ放送後、キャンセルが増えた」など、歯科の患者減に大きく影響を及ぼしていることがうかがわれた。
 その他、「診療所の窓を開けないでほしいと言われた」、「屋外での患者対応はやめてほしい」、「同じ施設内の他のテナントからのクレームがある」など、近隣住民・店舗から苦情を受ける事例も目立った。
 スタッフ・職員が被害を受ける例も指摘された。「受付スタッフが制服で外出したら、クレームが入った」、「職員の子どもが差別を受け、お稽古事をやめた」、「職員の家族が勤務先から別居生活を強要された」など、深刻な差別・偏見の事例もある。
 「当院への具体的な風評はないが、受診控えがあること自体が『風評被害』」、「医療業界自体が全体的に風評被害を受けている」との指摘もあった。
 現時点で具体的な風評被害はなくても、「この先はわからない」「感染者が出た場合は、ただでは済まないと覚悟している」「明日はわからない。医療機関・医療人の魔女狩りはやめてほしい」など不安の声も多くみられた。

小児科・耳鼻科で影響深刻―アンケートで寄せられた声

耳鼻咽喉科…患者さんの警戒強い 感染予防の費用も重く
・「薬処方のみ」「長期処方」を希望する患者が増えた
・ネブライザー治療ができず、大きな減収要因
・コロナ感染拡大が花粉症の時期に重なった
・上気道炎症状、味覚・嗅覚障害等を扱う最前線であり、患者さんから警戒される
・遠隔治療は耳鼻科ではできない
・患者数が減ったが、感染予防にかかる費用はアップ

小児科…予防接種、検診避ける傾向
・慢性疾患患者が自己判断で受診抑制
・予防接種を控える傾向。乳幼児疾患の予防が不安
・検診も減っている
・「クリニックに行きたくない」という親が多い。検診・予防接種をどうしたらいいかという相談が多い
・電話初診、再診の際に小児科診療加算が付加できないことは大きな痛手

以上

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